Kは大きくなっても相変わらずマイペースでした。

偏食で、お肉とご飯ばかりたっぷり食べるので、
だんだん太ってきていました。

そんなKを小学校の先生方は可愛がって下さいました。
何かと出来ない事が多い子でしたが、
「Kく~ん」と言ってムギュっと抱きしめてくれました。

Kは、疑問があると実際にやってみる子でした。
ある日飼っていた2匹の猫の髭がKに短く切られてしましました。
どうしてそんなことをしたのか聞くと、
「猫の髭を切ると、暗いところで壁にぶつかるんでしょ?
 だから本当かどうか試したんだよ。」
小さい頃から「どうして?」と全てに疑問を持つ子でした。

ただ、成績は常に1や2でした。
いくら諭しても、叱っても・・・
普通のことが出来ないKに私は焦り始めていました。

かといって、分かっていないのではないのです。
計算もやれば出来るし、内容もちゃんと理解しています。
大人がみるような番組も一緒に見て、正しく理解しました。
子どもなのに敢えて難しい言葉も使いました。

でも・・・皆と同じようにプリントをし、ノートを書き、
ワークを提出することが出来ないのです。

「出来るのに、どうしてやらないの?!」
何度そう言ってKを叱り、泣いたかしれません。
「こんな簡単なことが・・・」
Kが悪い子ではなくても、それだけでは生きていけない!
切実な不安感がありました。


Kが4年生になった時、私は夫と離婚しました。
仕事に対しても家族に対しても責任感が無く不誠実な態度。
夫はニートの時期を周期的に繰り返していましたが、
反省もねぎらいの言葉も無く、
開き直った態度で悪態をつきました。

『こんなに辛いなら、一人で頑張った方がいい。』
お金も無く、心のやすらぎもなく、子育てには不安が一杯でした。
私にも悪いところはあったと思いますが、
とにかく私には何もかも限界でした。

それでもKにとってはお父さんです。離婚するときに
「お父さんとお母さんを選ぶことは出来ない」と言ったKの言葉が
私の胸に突き刺さりました。

二人の子どもを連れて実家に帰り、
私が通った小学校へ子どもたちを転入させました。

次にKの担任になった先生は厳しい先生でした。
また、私の両親も大変厳しい人なので、
今までのように”出来ない”では済まされなくなりました。

その分テストでも良い点を取るようになり、
満点やそれに近い点数を取るようになりました。
私の母の勧めでバスケット部にも入り
一気にスマートになりKは見違えるようになりました。

それでも、”やりたくない病”は時々発生し、
その度に私の両親はKを厳しく叱りました。
時には体罰もありました。
いわゆる昔ながらの教育です。
私も同じように厳しく育てられたので、仕方ないと思いました。

子どもが出来ないことが多いと、世間は甘やかしていると言います。
でも、その事で自分を責める親は多いんです。
そして一層子どもに厳しくしてしまいます。
本当に必要なのは”寄り添い理解すること”なんです。
私の反省からですが・・・

厳しさは必要ですが、体罰にはそれほど効果は無いと思います。
賞罰、善し悪しはハッキリさせた方が良く、
それが具体的に自分の利益・不利益になることを実感させることは
必要なことだと思います。

そして、親が子どもに振り回されないことも。
寄添うのと、子どもの言いなりになるのは全く違います。

専門家の力を借りて、子どもの心を理解し、
脳の中では何が起きているのかを推し量り、
困った状態がどうやったら解消できるか考えます。

場合によっては環境を変える必要があるかもしれません。
一般の子育ての常識は当てはまらず、
全く違うやり方が必要かもしれません。
本当に困った時は、療育の専門家や、心療内科の先生など
知識をもった人の力を借りましょう。

知らないということは大きな損失です。
子育て中の1年、2年を甘く考えてはいけません。
あれ?と思ったその時に的確な対処をしてあげること・・・

私がKに早く適切な対処をしてあげていれば、
Kはもっと生きやすかったのではないかと思います。


どこかでKに似た誰かが、同じような目にあいませんように。
本来の明るさと、内に秘めた素晴らしい才能を開花させて、
いつも笑顔でいられますように。
Kのことを書くことで、Kに似た誰かが救われますように・・・