著者のロジャー・ペンローズは1931年生まれのイギリスの数学者・物理学者である。私自身には残念ながらペンローズの功績を正しく理解できる能力はない
が、一般には、「車椅子の物理学者」スティーヴン・ホーキングと共同で行ったブラックホールに関する研究や、ツイスター理論、非周期的に平面を充填する
「ペンローズ・タイル」の研究等で著名とされている。
ペンローズは本書で、人工知能を作ることは理論的に可能か否かという問題に取り組 む。そのために、人の意識の構造を理論的に検討し、最終的には、意識の働きを解明するには、意識の非アルゴリズム的な構造に対応する量子論の分野における 新しい理論が必要だという、破天荒な結論を導く。
本書は、既に自身の専門領域で大きな功績をあげていたペンローズが、初めて一般の読者向 けに書き下ろした本ということだ。1989年に出版された本書の日本語訳が出たのが1994年。私が大学1年生のときだ。朝日新聞の書評だったか、「古典 となるべき本」と絶賛されていたのが目に入り、興味を持った。
6000円近くもするハードカバーの本書を学生だった当時はまだ買える余裕 もなく、図書館でリクエストして借りてきた。しかし届いた本は500ページを超える大著なうえ、ほとんどが数学と物理に関する内容だった。延滞に延滞を重 ねても、ようやく目を通せたのは半分にも届かなかっただろうか。それでもうっすらと味わった本書の中心的アイディアは、その後の私の物の見方に重大な影響 を与えた。その後、社会人になって本書を購入し再挑戦したが、やはり挫折した。そして昨年しつこく再々挑戦し、やっと読み終えた。なんとも、15年越しの 読書となってしまった。
この本は今のところ、私が出会った本の中で、私にとって最も重要なもののひとつだと感じている。ペンローズの主張 が正しい方向を示しているのかどうか、これはまだ分らない(以前に読んだ別の本によると、ペンローズの主張は学会ではやはり異端視され、旗色は良くないと のことだ)。しかし、意識とは何かという、人間にとっておそろしく重要な問題について、一人の理論物理学者が全力で取り組み、それまでなかった全く新しい 視点を創造したことに、私は心の底から感動するし、敬意を抱いている。
量子論において波動力学を創始したエルヴィン・シュレーディンガー(1887-1961)がその著「生命とは何か―物理的にみた生細胞―」(1944)のまえがきにおいて、次のように書いている。
し かし、この稀有な著作は既にかなり有名ではあるものの、知ってはいても手を出すのをためらったり、読み終えることができずに中断してしまう読み手が少なか らずいるのではないか。これは私の経験に照らしてみて、そう思うということ。私がこの稿を起こしたのは、この本の魅力をなんとか分りやすく紹介し、また、 各章のダイジェストのようなものを作ることで、実際に読み始めた読者の助けに少しでもなればと思ったからだ。なにせこの冒険の書は相当に長いから。
最後の章までまとめるのにどれくらい時間がかかるか分らないが、少しずつやってみたい。
ペンローズは本書で、人工知能を作ることは理論的に可能か否かという問題に取り組 む。そのために、人の意識の構造を理論的に検討し、最終的には、意識の働きを解明するには、意識の非アルゴリズム的な構造に対応する量子論の分野における 新しい理論が必要だという、破天荒な結論を導く。
本書は、既に自身の専門領域で大きな功績をあげていたペンローズが、初めて一般の読者向 けに書き下ろした本ということだ。1989年に出版された本書の日本語訳が出たのが1994年。私が大学1年生のときだ。朝日新聞の書評だったか、「古典 となるべき本」と絶賛されていたのが目に入り、興味を持った。
6000円近くもするハードカバーの本書を学生だった当時はまだ買える余裕 もなく、図書館でリクエストして借りてきた。しかし届いた本は500ページを超える大著なうえ、ほとんどが数学と物理に関する内容だった。延滞に延滞を重 ねても、ようやく目を通せたのは半分にも届かなかっただろうか。それでもうっすらと味わった本書の中心的アイディアは、その後の私の物の見方に重大な影響 を与えた。その後、社会人になって本書を購入し再挑戦したが、やはり挫折した。そして昨年しつこく再々挑戦し、やっと読み終えた。なんとも、15年越しの 読書となってしまった。
この本は今のところ、私が出会った本の中で、私にとって最も重要なもののひとつだと感じている。ペンローズの主張 が正しい方向を示しているのかどうか、これはまだ分らない(以前に読んだ別の本によると、ペンローズの主張は学会ではやはり異端視され、旗色は良くないと のことだ)。しかし、意識とは何かという、人間にとっておそろしく重要な問題について、一人の理論物理学者が全力で取り組み、それまでなかった全く新しい 視点を創造したことに、私は心の底から感動するし、敬意を抱いている。
量子論において波動力学を創始したエルヴィン・シュレーディンガー(1887-1961)がその著「生命とは何か―物理的にみた生細胞―」(1944)のまえがきにおいて、次のように書いている。
「過ぐる100年余の間に、学問の多種多様の分枝は、その広さにおいても、またその深さにおいてもますます拡がり、われわれは奇妙な矛盾に直面するに至り ました。われわれは、今までに知られてきたことの総和を結び合わせて一つの全一的なものにするに足りる信頼できる素材が、今ようやく獲得されはじめたばか りであることを、はっきりと感じます。ところが一方では、ただ一人の人間の頭脳が、学問全体の中の一つの小さな専門領域以上のものを十分に支配すること は、ほとんど不可能に近くなってしまったのです。先輩であるシュレーディンガーのこの言葉を、著者はきっと知っていただろう。まさにペンローズは、この困難な仕事に挑んだのだ。
この矛盾を切り抜けるには(われわれの真の目的が永久に失われてしまわないようにするた めには)、われわれの中の誰かが、諸々の事実や理論を総合する仕事に思いきって手を着けるより他には道がないと思います。たとえその事実や理論の若干につ いては、又聞きで不完全にしか知らなくとも、また物笑いの種になる危険を冒しても、そうするより他には道がないと思うのです。」
し かし、この稀有な著作は既にかなり有名ではあるものの、知ってはいても手を出すのをためらったり、読み終えることができずに中断してしまう読み手が少なか らずいるのではないか。これは私の経験に照らしてみて、そう思うということ。私がこの稿を起こしたのは、この本の魅力をなんとか分りやすく紹介し、また、 各章のダイジェストのようなものを作ることで、実際に読み始めた読者の助けに少しでもなればと思ったからだ。なにせこの冒険の書は相当に長いから。
最後の章までまとめるのにどれくらい時間がかかるか分らないが、少しずつやってみたい。