ハーバード流交渉術(R.フィッシャー/W.ユーリー著) | 今日も花曇り

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読んだ本や考えたこと、仕事について。

弁護士は交渉ごとの多い仕事です。そもそも交渉がない仕事なんてほとんどないかもしれませんが、弁護士は係わる仕事のほとんど全部が紛争なので、激しく利害の対立する場面が多い。なにかというと交渉になってしまいます。

でも、司法試験では交渉に関する知識なんて問われないし、ロースクールでも司法修習でも交渉の技術など教えてはくれません。だから弁護士だからといって交渉上手であるとは限りません。
現に、私は交渉が非常に苦手ですショック!原因は、性格と頭の回転があまり速くないことのようです。

それでも仕事ですから、苦手だからという言い訳はできません。そこで少しでも技術で苦手を補えないかと読んだのが、

本「ハーバード流交渉術(ロジャー・フィッシャー/ウィリアム・ユーリー著)」(1981)

です。少し昔の本ですが、人の心理なんて時代によってそれほど違いがあるとも思えなかったので、定評あるらしいこの本にしました。

交渉術などというと、なんだか相手を丸め込むための権謀術数、手練手管のような気がして、あまりよいイメージではありませんでした。しかし読んでみると、この本で交渉術として検討されているのは合理的で公正な合意に到達するための技術であって、駆け引きやケンカの仕方では全然ありませんでした。

この本が交渉術の要点として強調している点が4つあります。

1 人と問題を切り離す
2 立場でなく利害に焦点を合わせる
3 複数の選択肢を用意する
4 客観的基準を強調する

詳しくは実際に本を見て頂かなくてはなりませんが、私が特に耳が痛いと感じたのは「2 立場でなく利害に焦点を合わせる」でした。

これは、自分(又は相手)が例えば「組合の代表者だから」とか「被害者だから」などと、立場から主張を演繹することをやめて具体的利害関係自体を問題にせよ、という指摘です。弁護士はややもすると依頼者の立場を全面的に主張し、相手からすれば全く容れられない事実や利益をふっかけがちのように思います。

訴訟はその極端な例です。もちろん訴訟は仕組み自体そうなっているのでそれでよいのかもしれませんが、任意の交渉や和解の席でもそうした発想から抜け切れていないのではないかと反省しました。

この本の原題は"GETTING TO YES"です。このYESは相手のみならず自分も含むものと考えれば、「合意への道」みたいなニュアンスでしょうか?私は英語がそんなにできないのでよく分りませんが、その方が邦題よりも本書の内容には合っているように感じます。
自分なりに内容をまとめたメモを作ったので、時折見返してぜひ実践したいです。
良い本でしたキラキラ