èVino-ゴリツィア支店

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出会った造り手たちの話やイベントなどなど、、、。

恵まれたヴィンテージに最高のブドウを収穫する。しかし、オレの中では「最高のワイン」じゃない。単純に“良いワイン“止まりだろうね。最高のブドウには「これまで以上の挑戦」をして、はじめて「最高のワイン」になり得る、、、。    だって、その方が面白いだろ?
ジャン=マルコ アントヌーツィ Gian Marco Antonuzi    (Le Coste di Clémentine Bouveron)
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皆さんこんばんわー!

 

最近少しずつ暖かくなってきましたね!少しずつ春を感じるような気温、寒さももう少しの辛抱でしょうか?

 

今回は、、昨年よりずっと温めてまいりました新しい造り手!Apiuaアピウアをご紹介させていただきます。このコロナ渦の影響でイタリアにも長らく行けなかったし、現地でも試飲会などイベントもほとんど中止で、造り手と出会う機会もほとんどなく、、。当然新しい付き合いを始める気はさらさらなかったのですが、、、汗。

昨年の初夏ぐらいでしょうか?なんとあの、、レ コステのジャンマルコが、まさかイタリアの造り手を褒めて、紹介してくれる!?という、前代未聞の出来事がおきまして、、、(笑)。

 

天上天下唯我独尊、、汗。人を褒める事を知らない(言い過ぎか、、)あのジャンマルコが!?という事で、いったいどんな人なのか、ワインなのか、ものすごく気になってしまいまして、、。サンプルでワインを送ってもらい、半信半疑で試飲したんです。飲んだ瞬間に「衝撃」を覚えました、、、。

 

ただ、新たな付き合いを始めるには、やはり自分の足で畑に赴き、当の造り手本人と会ってからでないと、、、。そして前回の訪伊で、ようやく訪問が叶いました!

 

アピウアという造り手はまだ始まったばかりのワイナリー。私自身、今回初めて行く事になったマルケ州、アンコーナ県にあるクプラモンターナという地域でえす。イタリアワインを学ぶ方なら一度は聞いたとこがあるんじゃないでしょうか?イタリアを代表する白ブドウの一つ、ヴェルディッキオ。DOCGでもあるカステッリ イエージのエリアです!

クプラモンターナ 町の中心にあるテラスから撮った写真。曇っていないと海まで見渡せるそうです。

 

お恥ずかしながら、初めての訪問となるイエジ~クプラモンターナ。近隣の造り手から勉強させてもらいましたが、クプラモンターナ周辺は古くより白ワイン、ヴェルディッキオの生産が有名で、「昔バローロに次いで、Cru(区画)に認定が行われるようになるハズだった土地。」だといいます。

結局のところ、1970年以降におきる大量生産の波によって、品質より生産量重視のブドウ栽培、ワイン造りが主流となってしまい、Cruの話は実現しなかったようです。

 

クプラモンターナはその名前から連想できる、急斜面の丘陵地の頂上にある町。そして町を囲むように入り組んだ渓谷や斜面を持っています。町の標高は600m以上、、、。写真で見えるでしょうか?土壌は非常に石灰質が強く、粘土と混ざり黄色が買った白色の大地。特にGessoと呼ばれる白亜質が非常に多いのが特徴。

 

そうした背景もあり、非常に有名な産地でありながら高品質なワイン、造り手が少ない、、そう思い続けてきました。前述の最も有名なCruである、「San Micheleサンミケーレ」を中心に、近年新しい流れが起きていて、有機的な栽培や醸造を始める造り手達が現れ始めています。

 

そして、このApiuaアピウアもその中の一人。当主であるロベルトは、元建築デザイナー。ボローニャ出身で、建築デザインを学び、ヴェローナ、ミラノと働き、パリに移り住んだ際、近所にあったヴァンナチュールのエノテカ(Crus et Decouvertes)で、「心を撃ち抜かれた、、」そうですww。

何せ近所にあるもんだから、毎日のように通っていたロベルト。そのうち、ただ飲むだけでは我慢できず、徐々に「自分でも造ってみたい!見てみたい!」と思ったそうで、、。エノテカで親しくなったアルデッシュの生産者ジル アゾーニの誘いで、彼のワイナリーで2年間働かせてもらい、ブドウ栽培から醸造まで経験させてもらったといいます。

そして、2016年にイタリアに戻り、妻のフランチェスカの故郷だったマルケへ移住。クプラモンターナ、そしてヴェルディッキオの可能性を感じ、この地でワイン造りを始めます。

畑があるのは、サンミケーレより少し下った斜面にあるMancianoマンチャーノ。緩やかな斜面、上下に分かれている3㏊、樹齢は約40~60年という非常に樹齢の高いヴェルディッキオと少しのマルヴァジーア ビアンカ。以前の持ち主も農薬を使わずに栽培していたので、畑のバランスが非常に取れている状態だったと話すロベルト。

見ていただいてわかるように、彼は土地の耕転は全く行いません。樹の下には様々な植物が自生しています。「耕すことは土地の表面にある微生物環境を破壊する事になる。すでに表土の環境が整っているこの畑では耕す必要はないし、雑草が伸びてもそこまで心配する必要はない。」そう話すロベルト。

フランスで体験した栽培を真似るのではなく、イタリア、マルケ、クプラモンターナの土地、気候、環境を考えて、必要な事をするだけ。最も大切なものは、畑の中に自然環境が整っているか?

、、、。まだスタートしたばかりでありながら、しっかりと熟考された彼のフィロソフィ、、初対面から圧倒されました!

 

高樹齢の畑からは、当然ながら多くの収穫量は見込めません。それも理解したうえで、クオリティを追求したブドウを求めているロベルト。3㏊のブドウ畑から造られるワインは、ボトル詰めした本数でいうとたった4000本という少なさ、、、。

下草に埋もれてますが、しっかりとヴェルディッキオの樹です(笑)。

病気で死んでしまい、空いた場所。ここに新しい苗木を植えるのが一般的なんですが、これほどの樹齢の高い畑では、若木はうまく値を伸ばすことが出来ないので、死んでしまう確率が高くなります。それに対してロベルト、なんとプロヴィナージュ(※)を用いて自根で植樹するんですって!!

 

「プロヴィナージュだと、親樹とつながっているから、根が張らないときは親樹から栄養を分けてもらえる。2年ほど成長を待ってから、親樹とつながる枝を切る。子供が成長するまで親が支える、まさに自然のプロセスそのものだと思わないか?フィロキセラ以前は、これが当たり前の植樹方法だったんだ。」

フィロキセラの問題はもちろんないとは言えませんが、まさに真理を一直線に射貫くような、ロベルトの考え方にちょっと感動さえ覚えました、、、汗。

(※)ブドウ樹の伸びた枝の一部を地中に埋め、先端を外に出しておくと、土中に埋めた箇所に根が張り、先端からは新芽や蕾などが出てくる。成長してから親樹と繋がっている枝を切り離す、台木を用いない植樹方法。

 

当初は借りた畑で、カンティーナ、醸造に使う機材など少しずつ揃えていこうと考えていたロベルト。しかし、この高樹齢のヴェルディッキオを畑が売りに出ていることを知り、即決で資金全てをつぎ込んでしまったといいます。そのため、カンティーナや機材にかけるお金が全く無くなってしまい、、、。

ご近所さんの車庫を借りてワインをストック、、、。まさにガレージワイン、、、(笑)。

 

醸造については、彼がフランスで経験したヴァンナチュールの考えをそのままに、収穫したブドウのみ、酵母添加や温度管理はもちろん、SO2も一切加えないワイン造りを行います。

「ワインは畑で造るもので、ブドウは美しさよりも健全さを尊重している。長い時間をかけた醗酵、始まり酵母が死んで、続く新しい酵母が生まれ引き継く、、これが続いていくのが本来の醗酵。同じ畑、同じ条件で収穫したブドウ、隣り合うタンクでも、それぞれ醗酵の表情は違うし結果のワインも同じものにはならない。決して同じ現象が起きないものだからこそ、興味が尽きないんだ。はじめから、何か添加物を加えたワイン造りに興味がないんだ。」

醸造を行う上で最も大切に考えているのは、フランスでの経験だけでなく、自分が畑で感じる事、直感や考察、そしてピエール オヴェルノワの言葉に影響を受けているというロベルト。「自分は会うことが出来ず、本でしか知らないけれど、その言葉がたまに経験や直感以上に正しいと感じることがある。」

 

ワインはすべてヴェルディッキオ、樹齢の古い区画、若い区画で2種類に分けています。

樹齢の若いヴェルディッキオから造る、ベース的なPista Raspi ピスタ ラスピ。

、、、樹齢が若いとは言いますが、それでも1976年の植樹、、、40年を越えるヴェルディッキオ。これを「若い畑」と呼ぶ彼に、正直驚いてしまいます、、(笑)。意訳になってしまいますが、子供が駄々をこねるときにする「地団駄」にあたるでしょうか?ロベルトが子供のころ、よくやっていたそうでお祖母ちゃんに呼ばれていた名前だそう。

造るワインの中での、ベース的立ち位置なワインなのですが、果皮と醸したり、無添加で造るという事が、ある意味「やんちゃ坊主」に当たるのでは?という事みたいです。

果皮と醸すといってもたった1日程度、しかし果皮が厚くタンニンを多く持つヴェルディッキオにとっては、それでも十分に堪忍を感じると話すロベルト。酸も豊富でタンニンを感じるほどの果皮の厚さ、土地の持つ強いミネラル分、そして十分な日照と糖分をもつクプラモンターナのヴェルディッキオ。2019を試飲した際、そのインパクトと骨格、奥行き、繊細さ。どれをとっても素晴らしさを感じました、、汗。

 

そして高樹齢の畑(1960年植樹)のヴェルディッキオから造られるLa Mauvaise Reputationラ ムヴェイズ レプタション。フランス語で「悪い噂」、有名なシャンソンの曲名から名付けられたヴェルディッキオ。ロベルト曰く、「自分がワイン造りに目覚めたのはフランスでの体験、それを忘れないようにという想いと、この曲の歌詞にあるフレーズが、まさに今の自分たちの思いそのもの、そう感じているからなんだ。」

 

お話ししたように、このクプラモンターナ周辺では、まだまだ大量生産や工業的なワイン造りがほとんどで、アピウアのような価値観で栽培や醸造を行っている造り手は、圧倒的な少数派なんです、、。しかも、この土地出身ではないロベルトにとって、地元の生産者たちの対応は冷ややかで、畑を貸してくれる人はゼロ、、彼のワイン造りを理解してくれる人は皆無、、、。こうした状況の中でも、「周りの言葉に流されることなく、自分の信じる道を進む、、」というこの歌が、彼にとっての指標となったんですね。

 

ヴェルディッキオで1週間程度のマセレーションを行うこのワイン。2019は初めてという事もあり、ヴェルディッキオ単一でボトル詰めしたものと、区画に植わっているマルヴァジーアを一緒に醸造したもの、2つのロットを分けてボトル詰め。

その味わいですが、、、。正直このワインを日本で飲んだ時、直感として「この人に会わなきゃいけない」そう感じたワインでもあります。

(、、、味わいについて長々コメントするのも手前味噌になってしまうので、、、。これは近日中にリリースとなりますんで、ぜひ皆さん試してもらえればと思います!)

 

ファーストヴィンテージがこの2019ですが、これをリリースしたのが2021年の春、、、。

イタリアだけでなく世界的にコロナの影響で、ヴィニタリーなどの試飲会が軒並み中止になり、なんとも厳しい状況でした、、、。アピウアというワイナリーを知ってもらう機会さえなかったそうです、、、汗。

 

そんな危機を救ってくれたというのが、なんとレ コステ、ジャンマルコだったといいます!彼のワインを飲み、自分の付き合っているインポーターに紹介したり、フランスで開催された試飲会に出展できるようにサポートしたり、、。

(あの傍若無人なジャンマルコにも、そんな良い心が残ってるんだ、、)、と心の声が漏れてしまいます(笑)。でもそのお陰で、エヴィーノとしても今回素晴らしい出会いをいただくことが出来ました!!

アピウアはまだスタートしたばかりでありながら、ロベルトの持つ栽培理念、そしてワイン観は本物だと感じました!彼らのこれからが非常に楽しみでもありますし、ぜひエヴィーノとしても、長いお付き合いをしていきたい造り手です。

 

ワインは昨年末にすでに到着しており、近いうちにもリリースを予定しております。

マルケ、ヴェルディッキオのイメージを刷新する素晴らしい感性、アピウア。ぜひ皆さんに飲んでいただきたい造り手、ワインです!

最後に、ロベルトに連れて行ってもらったイエジ近郊のトラットリアでの一皿。
鳩の半身、ウサギ、炭火焼の盛り合わせ、もう一皿はカルネ ミスト、、まさにお肉盛り合わせですね。
この皿1つが1人前なんですから、、、マルケ恐ろしいです。(もちろんこの前にプリモピアットもしっかり食べました!)

 

まさかのデカ盛りに、胃袋はもう限界超えてしまいましたが、、泣。気合で完食して次の目的地へ出発です~!