私は嘘つきだ。

うつ病の夫のことを他人に訊かれるとなんとかなるといいのですがというような曖昧なことばで、さも夫の全快を祈ってるかのようなふうを装ってしまう。


本当の私は全快なんて、祈っていやしない。

むしろ、もうこれ以上関わりたくない。

これ以上娘を傷つけたくないし、めんどくさいし、後味が悪いので、自殺とかしないで欲しいとは思うけど、正直、私の視界に入らないどこかに消え去って欲しいと毎日思っている。


私が仕事に行くときもうちにいるし、夕方には帰ってきてしまう。

帰って来なきゃいいのに、と思う。

実家も誰もいなくて帰れないし、ここが家だから仕方ないけど、ほんとになんていうか鬱陶しい。


離れていたら、もう少し同情できたかもしれないけど、もう無理だ。

同じベッドで眠る。

向かいあわせの席に着いて食事をとる。

同じ空間に暮らす。

きついのよ。

しんどいのよ。


だって、嫌いだから。


考えてみてよ。


嫌いなやつと寝食を共にするのよ。


きついでしょ。

可愛さ余って憎さ百倍って言うじゃん。

しかも、嫌いなんだけど、って言ったら、死ぬかもしれない繊細なやつだよ。

なんも言えねえ!


きらいになると、色々いろんなことがすべて気になるの。

臭いとか

ため息とか

咀嚼音とか

もう無理!もう無理!!


私、それでなくても潔癖なのに。


夫の方を向かないように壁際に張り付いて寝てるから、毎日身体がバッキバキだよ。

私のほうが早死にしそうだよ。

でも、そうしたら、私は楽になれるのかな。

なんて思ってしまう。


でも私は死なない。


娘を守ることとかわいい推し様を推すためだけに今は生きるんだ。