メガネコ食堂弐号店 -43ページ目

舞空術の話~後日談~。

昨日の続きです。


中学生時代、プールの授業において見事な「舞空術」を披露してくれた同級生のSくん。そのあまりの美しさに僕はしばし茫然とするのであった。

その後、もちろん男子の間では「舞空術ブーム」が沸き起こったのだが、頭から着水するかなりの危険行為のため、当然と言うか何と言うか、先生から即座に「舞空術禁止令」が出されてしまったのだった。

当時の先生と言えば、言うことを聞かなければ容赦のない鉄槌が飛んでくる恐怖の存在であったため「舞空術時代」はにわかに終焉を迎えたのだった。

そして、夏休み直前の最後のプールの授業は毎年恒例、全校生徒参加の「水泳大会」であった。

真夏の日射しの中、授業の成果を黙々と出していく生徒達。とは言えかなりの人数がいるため、待ち時間は正直退屈である。そんな中、飛び込み台に着いたひときわ大きな男子生徒の姿が目に飛び込んできた。Sくんである。

「舞空術」の創始者であり、最も華麗に飛ぶ男である。しかし世には「舞空術禁止令」がはびこり、今や誰一人飛ぶものはいない。

一人厳しめの眼差しで飛び込み台に立つSくんの顔には一つの覚悟が読み取れた。まっまさか、、、。飛ぶ気か!?

今一度確認しよう。この時は、全校生徒・全先生衆目の、しかも記録のかかった水泳大会である。

固唾を飲んでSくんを見守る男子達。そしてスタートの号砲が鳴り響いた。


やりやがった!!!


Sくんは最も危険度の高い水泳大会の本番で、創始者の名に恥じない見事な舞空術で空を飛んだのだ!

男子の一部からもの凄い歓声があがった。気づけば僕も叫んでいた。

Sくんは不利なスタートにも関わらずぶっちぎりでプールを泳ぎきり、渾身の力で拳を天に突き立てた。

再度の歓声が上がり、水泳大会は大盛況の内に幕を閉じたのだった。もちろんSくんはその後、数人の先生に囲まれてこっぴどく怒られる事になったが、その顔は照りつける太陽の様に晴れやかだった事は言うまでもない。

その後、卒業となったため、現在「舞空術」が伝承されているかどうかは定かではない。それでも僕らの青春の中には「舞空術」の三文字が深く深く刻まれたのだった。




了。



(※作中に登場した舞空術は危険な行為のため、決して真似はしないでください)






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舞空術の話~其の弐~。

昨日からの続きです。


中学生時代の夏、漫画ドラゴンボールの世界の技で自由自在に空を飛び回る「舞空術」を使えると、同級生の『Sくん』が呟いたのが事の始まりだった。


Sくんいわく、"次の体育の授業"で見せてくれるとの事だが、季節は夏、、つまりは校内のプールで行われる「水泳の授業において」ということになる。

、、あれ、何だか嫌な予感。というか、僕の期待とは違うものが出てきそうな気配しかない。

そして訪れたプールの時間、限られた季節の楽しみというか、その開放感はやはり格別なものである。

三年生ともなれば教わる泳ぎもなくなっているため、それぞれが自由に泳ぎ回るだけの時間となる。

そんな中、ど真ん中の三番コースの飛び込み台に立ったSくんはついに高らかに「舞空術」の披露を宣言した。

僕はと言えば、「はいはい、どうせ勢い良く飛び込みをするだけなんでしょ?」

と半分白けた気持ちで見守っていた。そしてやはりと言うかSくんは勢い良くプールに飛び込んだ。しかしそれを見た僕は、思わず"ホウ"と息を飲んだ。

例えるなら漫画「北斗の拳」で宿敵"レイ"と対峙した"ユダ"が相手の技の美しさに思わず見とれてしまった時のように。

Sくんの「舞空術」は少し亜流である。一般的にはウルトラマンの様に両手を前に付きだしバランスを取って飛行するのだが、Sくんは両手を体の側面に添え、頭から飛んでいく。"気をつけ"の姿勢そのもの。

それを見た瞬間、真夏のプールにも関わらず、あたかも雪山を舞うスキージャンプ選手の姿が重なって見えた。そう、それほどに完璧で美しかったのだ。

舞空術を披露し終えたSくんはもちろんドヤ顔で僕に近づいてきたわけだが、当の僕は少しばかり感動していた。

想像していた通りの「舞空術」の正体だったが、"それを遥かに超える「舞空術」"を見る事が出来たのだから。

僕は素直に「凄かった!飛んでた!」と告げ、Sくんに惜しみ無い称賛を送ったのだった。



次回後日談へとつづく。






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舞空術の話~其の壱~。

古来から、人類の夢であり続けてきた

「空を飛びたい」

という願い。鳥のようにあの大空を、と誰しもが一度は憧れる永遠の夢である。

多くの発明家の努力により飛行技術は進化し、ライト兄弟により飛行機が完成した。現在では大型旅客機が世界中を飛び回っている。

しかし、そうじゃないのである。

この生身一つで空に浮かびたいわけです。重力に縛られない宇宙空間に行けば、浮くことは可能である、というより浮かざるを得ないわけなのですが。でもそれは宇宙飛行士という、厳しい試練を乗り越えた人たちの言わば特権みたいなもので、多くの人々にとってはやはり遠い世界の話である。


そんなモヤモヤした空気を忘れさせてくれたのが、僕らの少年期に一世を風靡し、今だ世界中で人気を誇る漫画『ドラゴンボール』である。

その中に、実際に闘う戦闘系の登場人物ならば、誰しもが使える

『舞空術(ぶくうじゅつ)』

と呼ばれる空を自在に飛び回る技が存在する。

これは亀仙人のライバルとして登場した「鶴仙人」が使う鶴仙流の基本技として登場するが、最終的には"気"を扱える人物なら誰でも使えるお手軽な技へと変遷していく。


前置きが長くなってしまったが、ここからが本編である。

僕が中学3年生の時、真夏の光が照りつける七月の話だ。世間ではまだまだドラゴンボール全盛期、少し大人になったとはいえ、まだまだ少年であった僕らの隣には当たり前のように悟空たちがいた。

そんな折、学校で最も体格が良く、実際には見たことないが"喧嘩最強"と目される同級生の「Sくん」が飛んでもない事を口走ったのである。


『俺、舞空術使えるぜ』


そんなバカな、と最初は思ったのだが、格闘家顔負けの体格を誇る「Sくん」の事だ、"気"を扱えても不思議ではない。つまりは、、。

僕の心臓は跳ね上がった。そして次の「体育の授業で見せてやるよ」と告げるとSくんは自分の教室へと消えていった。

半信半疑ではあったが、何か不思議な期待感を隠せない僕は、しばらく廊下に立ち尽くしてしまうのだった、、。




つづく。






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