シャンソンは疲れる。 | メガネコ食堂弐号店

シャンソンは疲れる。

明日からの怒濤の六連ライブに備え吉祥寺でリハをして帰るつい先ほどの出来事だった。

一人ホームへの階段を登り、到着していた電車に滑り込む。

乗ってすぐ、同じ車両内で声が響く。

「疲れるー、シャンソンは」

んっ?声でかくね?

チラッと見ると、座席にいる黒いハットをかぶった30代くらいのロックテイストの男性が目に入る。

「シャンソンはね、疲れるー」

間違いない。こいつだ。かなりお酒に飲まれてるらしく、ひたすら連呼している。

確かにムードに乗せて美声を響かせるシャンソンだから歌えばさぞかし疲れるのだろう。

しかしGW中とは言え、この時間帯には迷惑な話である。どう見てもシャンソン歌手には見えないし。

車両内の何人かは怪訝な表情を見せ始めた。

「疲れるー、シャンソンはね」

倒置法で攻めてくるあたりまた腹がたつ。

隣駅の西荻窪が迫る。どうやら降りるらしく、おぼつかない足取りで降り口付近に立つ俺の横へきた。

「シャンソンはなー、疲れるよー」

近くでよく聴いてみて、おや?と思う。もう一度、、

「サンションはなー、疲れるー」

?さらに、、

「サンソンはなー、疲れる」

??そして、、

「サンソガなー、疲れるー」

?!これは、、

「酸素がない、疲れるよ」

!!

どうやら飲みすぎてうまく呼吸ができてなかったようです!そりゃ疲れるわな!見た感じ全然大丈夫そうだったし。そのまま千鳥足で西荻窪のホームへと降りていく。

ドアが締まり西荻窪を出た車両内ではすぐさま件の男の話で持ちきりになる。

「シャンソンて!」
「シャンソン?酸素?」
「絶対シャンソンって言ってたよ」

うん確実に言ってた。シャンソンって。

スッキリした人々を乗せ中央線は夜の東京をひた走る。


そんな話。