ーウリウリの5ー
「お顔が真っ赤っかーです」
今日は少しお寝坊さんしちゃいましたよ!慌てて鞄を引っさげて駅までまっしぐらです。で、ビックリっ!鞄から定期券を出そうとしたら、鞄が…「避難袋」でした…(汗)。鞄を取りに戻っていたら遅刻なので、仕方なしにそのまま会社です。
ちょっと前ですが、ショッピングに出かけたときに、避難袋を見つけて購入してしまいました。前の日にテレビで311の震災の特集で避難袋が出てたんで、ついついです。地震は怖いですから備えあれば憂いなしですねぇ。
で、その避難袋を玄関口に転がしていたので、慌ててたから鞄と間違えちゃったわけです。あーあ、です。避難袋のポッケにいざという時のお金を突っ込んでおいたので、今日一日それでなんとかしますよ~。
その避難袋を担いだまんま満員の通勤電車に揺られてギュウギュウでした。ウリエはチビこいので避難袋がウリエを担いでるような感じで、周りの人たちの迷惑そうな視線がちょっと痛かったです。駅に着いたら着いたで、電車のドアからバァーンって押し出されてウリエはコロコロ転げちゃいました。おまけに避難袋の口が開いて中身をプラットホームにまき散らかしてしまったんです。恥ずかしくって、ウリエは慌てて避難グッズを拾い集めました。そう言えば避難袋を買ってから中身を確かめてなかったので、何が入ってるのか知りませんでした。拾いながら確かめてたんですが、懐中電灯、小型ラジオ、軍手、乾パン、ペットボトルのお水…、道理で重たいわけですねぇ。最後になんか小さい箱がありました。ゲゲッ!こ、コンドームですよ~(汗)。なんでこんなもんが避難袋に入ってるんじゃぁ~!!!避難するのにこんなもんはいらないですよ。もうビックリで恥ずかしくってウリエのお顔は真っ赤っかーです。恥ずかしさの極限ですぅ!ウリエはその場をそそくさと立ち去りました。
お財布もスマホもなーんもない一日は辛いですよ。やっとこ仕事が終わって早くお家に帰りたくって…。あ、約束を思い出してしまいました。今夜は久しぶりにタマちゃんと日本酒バー「三日月」さんへ行くことになってたんでしたー。うー、仕方なくウリエは避難袋を担いだままお約束のもとへ行くことにしました。
最寄りの駅でタマちゃん達と待ち合わせでした。三日月に行く途中二人乗りの自転車とすれ違いました。二人乗りはいけませんねぇ。危ないです。ふと見るとどっかで見たよーな見ないよーな…。思い出しました。自転車を運転してるのは前に三日月と黒豚のお店で出会った「付喪神」の人でした。女の人を後ろに乗っけてます。付喪神の人はプレイボーイなんでしょうか?するとタマちゃんが「あ、猫さんだ!」と自転車の付喪神の人に手を振りました。あの人は猫さんって言うのですね。猫さんはプレイボーイな人なんですかねぇ。
ウリエ達はいつものカウンターの一番奥の席に座りました。もちろん一番奥がウリエで横がタマちゃん、そしてカンちゃんです。ウリエは今日も2人の話しを「うんうん」と聞く係です。そのうち2人が盛り上がって、ウリエは焼酎をおかわりでグビグビです。ふとカウンターの表の席を覗くと、さっきの自転車二人乗りの猫さん達がいました。ウリエは思わず「あ、猫さんだー」と声を出しちゃいました。猫さんはこっちを向いてなんか目が合っちゃったみたいで、ちょっと気まずい感じです。ウリエは恥ずかしくなってタマちゃんの陰にスッと隠れて焼酎をグビグビです。
いつものようにだんだんつまんなくなってきましたよー。そしたら三日月のマスターさんがウリエの避難袋に気が付いちゃいました。「それなーに?」。タマちゃん達も興味津々で避難袋の話しになりました。タマちゃんが「中身見せてー」って避難袋をウリエから取り上げて、事もあろうか中身をカウンターに次々出して行くんです。「あーアワアワ…」。ウリエは慌てて止めようとしたんですが、時、既に遅し、でした。出てきちゃいました。アレです…。「えーウリエちゃんいつも持ってるんだー!」とタマちゃんがはしゃぎました。ウリエはまたまたお顔が真っ赤っかーですよー。ウリエは俯き加減でさっさと避難グッズを避難袋に片付けました。こんな避難袋、駅のゴミ箱にでも捨てちゃえばよかったですよ。
帰りの夜道はいつも一人ぼっちです。今夜はもうすぐ満月さんになりそうなお月様が雲の間から覗いていました。
「どんくさいんだからー。もう恥ずかしくってしかたなかったわ」
「出たっ!」
「何が、出たっ!よ。失礼なっ!」
「恥ずかしかったのはウリエで、ツキエちゃんは関係ないんだから」
「アホか。何度も言うようにあなたと私は同一人物です。アンタより私の方が羞恥心があるだけ恥ずかしさは倍です。倍よ!」
「知りませんよーそんなこと」
「もうその避難袋なんて捨てちゃえばいいのに。何でいつまでも大事そうに抱えているのやらさっぱり分かんないわ」
「ゴミ箱、無いもん」
「そのへんにほかっとけばいいじゃない」
それもそのような気がしたので、今日一日お付き合いした避難袋をそっと電柱の下に置きました。ゴミはいけませんが、今回は仕方がないですねぇ。さようなら避難袋さん。そんな風に思いながら歩き始めると「もしもし、鞄、落としましたよ」とサラリーマン風の男の人がウリエの避難袋を抱えて、ウリエを追いかけてきたんです。「ヒエーッ!」です。「あ、あ、アワアワ、ありがとーございますですっ」。ウリエは頭をぺこぺこ何度も下げて、急いでその場を後にしました。もうドキドキです。
「アホね!」
「うるさいっ!ツキエちゃんがいけないんでしょ!」
あーあです。なんか避難袋はさらに重たくなったような気がしました。避難袋の中にツキエちゃんが入ってるんじゃないかって思っちゃいます。もう避難袋なんかいりません。明日の朝、ゴミ箱におさらばですよ。

ツクヨミ研究所の一夜 アナザーストーリー「ウリエちゃんのウリウリな気持ち」より
ーウリウリの5ー
避難袋とまた居た猫さんとアレ、アレはアレですぅ(恥)
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