あの頃を真似てみる。

忘れてしまったあの頃を。

あれから、どんな風に過ごして来たのか忘れてしまった。

別人になってしまったかの様に、

街頭が照らし出す闇にも気付けなくなって、

光だけ見て過ごして来たんだ。


闇のない世界はただれて、やがてカチカチになって、

治癒したように錯覚していた。


みるみるうちに無くしていたことにも気付かずに。


あの人の声にも慣れて、愛されることにも飽きていたあの頃を。


もっと思うがまま、欲求のまま、溢れ出せば良かったのに。


自分の中のバランスばかりが気になって、

要約したように、見せかけの光を正しいと信じ込んでいた。


もっと崩したり、もっと見失って、明日をやり直せないほどに、

誰かを愛したりすれば良かった。


耳元で頷いて、厄介な仕草で、惑わしたりしてたじゃない。


夕べの出来事、思い出して、今すぐ会いたくなって。

あなたの放つ匂いが街中で香ったら立っていられなくなるくらいの。



優劣なんて感じなかった。

イーヴンでもなかった。

それでも、幸せだった。


不器用に寄り添った愛がぶつかったあの時を。


わたしは今、思い出して憧れている。


一生に最後の恋。

二度とそんな恋、できないと思ってた。

世界の色とりどりの季節を巡って、

パステル、モノクロ、セピア、

この目に映る色が果たして本当にその色をしているのかなんて、

確かめようがない。

もしかしたら、この世界は「無」かも知れない。

あなたも私も本当はこんな肌の色をしてないのかも知れない。

目に映る全てが頼りなく、どんな方法で証明が出来る訳でもなく、

でも、日本の桜の色を見せたい人がこの世界のどこかに居ることを、

私は確信もなく、訳もなく、信じている。

そんな自信が何故かここに在る。
わたし発、あなた経由、わたし着。

どんな私も誰かの体内を通り抜けて私になる。そんな気がする。


体温の違いを何度も何度も感じながら

目を恐る恐る開いてあなたを確認して、そして、黙視する。

あなたも私にも相容れない半径が冷たい層となって、それは深海への沈みゆく縮図だった。


あなたに沈みゆく私をあなたは深海で待ってる。

あなたは救い出されたくて、深海で待ってる。

光の届かない恐怖の暗闇で盲目になっているのかも知れない。

風の吹かない春のピンクに色ずく街を知らずに。


それはエーゲ海、

それは真珠湾、

それは青の洞窟、

それは日本海、

それは太平洋。


何処にいるの?

私を待ってるあなたは何処にいるだろう?