公職追放中の円谷英二に話したらノリノリで企画が進み実現。

ただし本人は出来栄えに納得せず後年リメイク(東宝「透明人間」1953)。

元は(ユニバーサル「透明人間」1933)のパクリではあるけど、本家はホラーとして作ったのに対し、日本では「悪さしちゃいかんよ」という道徳映画になってる。

まあそりゃそうだ。怖いというのは見た目から。姿が見えないんじゃ・・・怖くないかも。

本家では乱暴の限りを尽くして怖がらせるらしいけど、まあテロリストという意味においては怖いんだろうけど、ドラキュラとかミイラとかに比べて絶対的にキャラが立たない。

いや、ちょっとミイラに似てるか?

原作がH・G・ウェルズということでSFの位置づけ、まあホラーじゃないな。

空想するのはいいけど科学的に浅い。透明な物質に光が透過すると屈折するという常識。

映画「プレデター」で宇宙人が光学迷彩を纏って出てくるまで、ウェルズの言いなりになっていた。

 

円谷と聞くと東宝でナンチャラ人間を何本も撮っていて、その辺りの企画の流れにも興味がある。「ウルトラQ」→「ウルトラマン」といった具合にホラーからヒーローに化ける過程とかも。

まあスポンサーなんだろうけど。

円谷は文献が豊富で読んでも消化しきれないんで、東宝特撮特集で改めて。

 

この映画、「花くらべ狸御殿」(1949)、喜多川千鶴と水の江滝子のシーンをまんま使用してる。

尺を稼ぎたい意図かとも思ったけど、余りに異質で唐突に出てくる。

ドラマの方はドラマできっちり演じてるし、この二人をゴリ押ししたい何かがないと説明がつかない。

枕かな?

当時大人気で、これを出さないとファンが納得しなかった、と思いたい。

神戸での撮影というのも何かある。

須磨の別荘が舞台になってたんで、関係者が住んでたのかも。

 

科学者が月形龍之介。その弟子がふたり。

1人は光を反射しなくするクスリ。もう1人が光を透過させる、つまり透明になるクスリを作ると宣言。実は月形龍之介は透明になるクスリを完成していた。

これを飲んで悪事を働き、追い詰められ入水自決。死んで水面に浮かぶ弟子の姿。

敗戦で海に沈んだ帝国海軍を憐れんでいるようにも見えた。