日々暮らしていると、自分でも対処に困る心の状態がある。その一つが嫉妬。その本質が知りたくて本を読んだことがある。自分に当てはまる具体例が載っていると、多少の安堵感と、その数倍の自己嫌悪感に襲われる。

数か月前に、新聞の書籍欄に山本圭著「嫉妬論」が紹介されていた。山本氏は 政治思想が専門らしいが、紹介文が興味深かったので図書館で借りて読んだ。



以下、本の冒頭の嫉妬一般に関する記述から印象に残ったものを列挙する。
◯嫉妬の説明

広辞苑:自分より優れた者を妬み嫉むこと。この説明では、どんな点で自分よりも優れているのは不明。財力、容姿、社会的立場などが考えられる。

・アリストテレス:老人は若者に対して妬みを持ち、同じことに多くを使い果たした人は少ししか費やさなかった人に妬みを持つ。難渋の入手した人は、素早く入手した人に妬みを持つ。


・カント:他人の不幸が自分の幸福を少しも損なうわけでもないのに、他人の幸福を見るのに苦痛を感じる性癖。嫉妬感情は不合理であり、社会科学で扱いにくい。


・著者:心の乱れを伴う苦痛。他人の幸運に向けられるが、受けるに値しない者の幸運ではなく、自分と似ている他人の幸運。幸運がその者にふさわしくても我慢できない。


○嫉妬の特徴

社会心理学社会比較理論によれば、嫉妬は他者を媒介として自分の姿を認識できる態様の一つ。私たちは比較を通じて自尊心や劣等感を持つ。比較自体は人間の性であり、良いも悪いもない。これに嫉妬心が絡むと息苦しくなる。

嫉妬は自らを偽装するので外に現れにくい。自分が欲しいものをライバルが持っている状態。「欠如」に関係し、そのために攻撃的になる。


嫉妬はアリストテレスの時代からあったこと驚いた。まさに人類共通の悩み事。各人の拠り所は千差万別。それを無視して、見えやすい事柄を比較する自分に呆れた。