池澤夏樹氏は 1945年、北海道帯広市生まれ 。札幌市、ギリシャ、東京、沖縄、フランス、札幌と移住。 世界的視野からの創作と評論活動を行っている。 


先日、池澤氏の「始まりと終わり」という本を読んだ。この本は、同氏が2013から2017年間に新聞に書いた記事を集めたもの。



著者いわく、「世の中の動きを1ヶ月ごとに区切り、その中から選んだテーマをコラムにまとめたもの。 世界の動きでなく個人的な趣味の話題もある」とのこと。 


それぞれの内容が示唆に富むが、深淵で短くまとめるのは難しい。以下に、「場所とモノの出会い」というタイトルのコラムを要約した。


 〜(前略)

地図というものの意味が変わってしまったと思う 。かつて地図は未知の世界の絵図だった。人は地図の上でまず自分の位置を確認し、 風景と地図を見比べ、得られた情報によって正しい方向へ踏み出した 。国土地理の地図はそういうふうに用いられた。 


 今の「マップ」ではまず目的地を登録する。後は指示に従って進むのみで、途中に何があるかは問題にならない。その典型がカーナビ。この世界に未知という概念はない。好奇心に駆られて立ち止まるということがない。

(後略)〜