佐治晴夫氏は、1935年東京生まれの理学博士( 理論物理学)。 北海道の美宙天文台長。佐治氏の本を読むのは初めてである。図書館で本棚を眺めていたら、この刺激的なタイトルが目についた。 



 パラパラめくると、短いエッセーがたくさん集めてある。自然科学系の方なので、人文・社会科学系の方とは視点や論理展開が異なり、興味深い。以下は、「人間関係って実はシンプル?」というのエッセイの概要である。


 『人付き合いにはなぜトラブルが起こるか。人は自分の「メガネ」で外界を見ているので、他人とかかわるとき葛藤が生じる。「どうしてあんなことをするのか」と感じるのは、「私ならあんなことはしない」との思いがあるから。


人の心には固有の履歴があり、それを基準に物事を判断しがち。しかし、相手の尺度を想像できると、その人の心が見えてくる。とはいえ、人間は自分本位な生き物だから、避けようのない本能があり、相手の事だけを考えては立ち行かない。


自分と相手とのバランスをどうとるのか。それには、自己の利益をどれだけ相手の利益に変換できるかがポイント。人に与えることによって自分も「幸せ」が得られる。つまり、「私とあなた」という関係から「あなたと私」という関係にする。 


 相手と関わると、その人の状態を変えてしまう。会話でも、自分がどんな言い方をするかで相手の反応が変わる。追い詰めれば、相手は逃げ道を探すばかりで本音は言わない。まず、相手の言い分を丸ごと認めたうえで信頼関係を作ることが必要である。』


文中で、相手と関わることを、手でリンゴをつかむことに例えていた。つかみ方が緩すぎればリンゴが滑り落ち、 強くつかみすぎると変形してしまう。この辺りに人間関係の妙意がありそうだ。