父は大手自動車メーカーのエンジン部門にいた。30年近く勤めていた。

父は昔、弁護士や医者を目指していたらしい。
しかし夢叶わず。
当時飛ぶ鳥を落とす勢いの「自動車」会社に入った。
大学を中退したのでホワイトカラーではなく、ブルーカラー。
働いて、働いて、働いて。
自ら「職工」と自嘲していた。
自嘲はしていたのだが、どこか誇らしげでもあった。
昼勤もあるが夜勤もある。
ロングピースを毎日2箱。
昼勤の夜はほぼ酒を飲み。
酔っ払っては子供を起こし説教。
土日は趣味の釣り三昧。
家族サービスなどは無し。

やりたい放題。

時はバブル前夜。
日米自動車摩擦。
車は売れず「職工」にもノルマを課す。
母に免許を取らせ車を購入。

挙げ句、脳に梗塞が出て。
ロングピースも辞め、
酒も控えた(何故か焼酎はOK?)
数年後「職工」は辞めた。

今は病気もよくなり
公共施設の「清掃員」
かれこれ20年近く。

何かから解放され、
やけに楽しそうだ。

「職人」の原点は、
夢に破れて
とてつもなく働いて
不条理で
自分勝手な
でも誇らしげな
「職工」