AKB48“モウソウ馬鹿”

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「まだまだやれます」
乃木坂学園ハシモトナナミが、優子にしがみつく


「楽しいー、やっぱたいまんはいいよな」
優子は、ハシモトに、容赦のないボディーを打ち込んだ 胃液を吐き出し、うずくまるハシモト


かねてからの約束を果たすべく、優子はハシモトとのたいまんに臨んだ そして、これか、優子の人生にとって最後のたいまんとなるのだった


「まだまだ」
ハシモトの右ストレートが、優子の顎をとらえた 膝から崩れ落ちる優子 間髪入れず、ハシモトの蹴が優子の顔面に入る


「なかなかやるじゃねえか(笑)」
優子は立ち上がると、ハシモトにタックルする もろともせず、受け止めるハシモト 膝蹴が優子のボディーに突き刺さる


「死ねや」
ハシモトが左フックを放つ しかし、それをかわす優子 ふたりの目が合う 微笑む優子 次の瞬間、強烈なアッパーがハシモトをふっ飛ばす 決まった…


地面に叩きつけられ、動かないハシモト 優子も、地面に大の字に寝そべる
「生きてるか、ハシモト」

「なんとか」
そう呟くと、ハシモトは大声で笑った
「あはははは、あははは… ありがとうございました、優子さん いい思い出になります 自分、ヤンキーになったことを後悔しません 上には上がいる 優子さんに出逢えて、よかったです」













厳しい冬が終わり、仙台にも桜の季節がやってきた こっちの馬路須加女子学園には、卒業式はないらしい よほどのことがない限り、留年もないし、自動的に卒業となる 優子は、桜の花びらを浴びながら、マエダアツコ、タカハシミナミと別れの時間を過ごしていた 二人とも、介護士になるための新しい生活が待っている
「優子、これからどうするの」
マエダが別れを惜しむ


「さあ、しばらくはブラブラするつもりだ わたしは天涯孤独だからなあ」
優子が微笑む


「てめえは孤独じゃねえよ 俺たちがいるだろ それから、てめえを頼りにしているおじいちゃん、おばあちゃんがいる 俺たちは、ここにいるから いつでも戻って来いよ」
タカハシが優子をハグする 次いで、マエダもハグした


「そんじゃ行くわ (ワタナベ)マユのこと、ラッパッパのことを頼む」
そう言い残し、優子は旅立って行った 優子の背中が見えなくなるまで、見送るマエダとミナミ しかし、優子が振り向くことはなかった…














桜色のパーカーのフードを目深に被ったネズミ(コジママコ)が、優子の前に立ちふさがる
「どこに行かれるんっすか?」


「さあな」
微笑む優子


「たいまん、まだなんっすけど」
ネズミの眼光は鋭い


「たいまんは卒業した 悪いが、相手はしてやれねえ わたしは、もう社会人だ 高校生を殴ったら、逮捕される」
ネズミの脇を通り過ぎる優子


「どうして、あっしをラッパッパに入れたんっすか あっしは、裏切りもんなんっすよ」
口の中からチューインガムを取出し、弄ぶネズミ


「てめえは、そのガムと一緒だ ラッパッパという口の中に入っとけ 指で弄ぶためのものじゃねえ ガムにも生まれてきた意味があるんだよ 夢を膨らませろ それから、ダチは大切にしろよ」
振り向くことなく、右手でバイバイしながら、優子は去っていった


「ガムと一緒か… あんた以外の奴に言われたら、半殺しにするんっすけどねえ…」
そう呟いて、ネズミは優子の背中に深々と頭を下げた


















それから仙台に何度も桜の季節が訪れた 満開の桜の下を歩く小柄な女性 大きなバックパックを背負い、キャリーバックを引っ張っている 女は、コンビニを見つけると、お茶と食料を調達しようと立ち寄った 雑誌コーナーの前を通ったとき、一冊の週刊誌の表紙に目がとまった “なにわの介護が変わる!” 女は、その週刊誌を手に取り、開いた 特別養護老人ホーム・ラッパッパ施設長であり、なにわ介護サービス協会施設部会長であるヤマモトサヤカと、なにわ介護士労働組合長ワタナベミユキの討論の様子が書かれていた どうやら、ワタナベは、介護に携わるすべての労働者を公務員として採用するように要求してるみたいだった 女は、その記事を読み終えると、顔をにやつかせ「やってるじゃねえか」と独り言を呟いた 女は、菓子パンとペットボトルのお茶とその雑事を買うと、桜の木の下のベンチに腰を下ろした ヤマモトサヤカが、マユの父親の経営する特養で働いているとの噂は聞いていた しかし、ワタナベまでもが介護士になっていたとは その記事には、ジョウニシケイ、ヨシダアカリ、コンドウリナの名前も載っている 「相変わらず、マジな奴らだなあ」 女は、雑誌をさらに読み進めていった “謎の風俗嬢にゃんにゃん” 「なんじゃこりゃ?」 女は、独り言にしては大き過ぎる声を上げた にゃんにゃんは、風俗嬢の経験を生かし、障害者の性の悩みについて真剣に取り組んでいるとのこと 彼女は、障害者の心の中が見えるらしく、トラウマを優しくケアするのだそうだ 「マジっすか」 女は再び声をあげた そこには、微笑むコジマハルナの写真が… そして、さらに読み進めていくと“史上最年少大臣誕生”という記事が 参議院議員ワタナベマユが介護・地域包括ケア大臣に任命されたという記事だった 「そうか… マユの野郎は、おやじさんのあとを継ぎやがったんだ なになに、仙台馬路須加女子学園校長タカハシミナミ、仙台老人施設協会理事長マエダアツコとタッグを組み、ボランティアを本格的に地域包括ケアに取り入れるだと」 女は雑誌を閉じると、菓子パンを口に押し込んで、お茶を一気に飲み干した 「皆、頑張ってるんだなあ…」 女は立ち上がると、来た道を引き返す 「こりゃ負けちゃいられねえ」 女は発展途上国に介護のノウハウを輸出し、教育して、少子高齢化で介護労働力の不足に悩むこの国に、介護労働力を逆輸入することを目論んでいる すでに、多くの外国人が、介護士としてやってきており、スキルはすでに習得しているので、即戦力となって重宝がられていた マジ女に寄ろうかと考えいたが、女は空港へと歩を速める 次は、どの国に行こうか…
















馬路須加女子学園校長キザキユリアは、前から歩いてくるパーカーのフードを目深に被った女に声をかけた
「コジマ先生、スチューデンツの様子はどうですか?」


「そうっすねえ…」
そう言うと、チューインガムを膨らました
「入学して一週間も経ってるのに、まだたいまんしたって噂は聞かないっすねえ」


「最近の若いピーポーは活気がなくていけません こんなことでは、どっちが介護されてるのかわかりませんねえ 優子さんがおられたら、さぞかし悲しまれるでしょう」
キザキが眼鏡を外した
「まーじーだーよ マジにならなきゃ、生きてる意味がないんだよ」


続く… いや、取り敢えずは、いったん終わりm(__)m
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東北地方は、やがて厳しい冬をむかえた マジ女仙台では、ラッパッパを中心に、博多、栄、なんばから招集されたヤンキーたちが、雪掻きなどのボランティアに精を出している 特に、介護を必要とする老人が生活しているような家庭に対しては、地域の人々と連携して、見守りを行った 腕には自信のあるヤンキーたちである 防犯という意味においても重宝され、想像以上に地域に溶け込むことができた マユの父親は、地元の政治家や名士、行政に働きかけて、ラッパッパを後押しすることに余念がない シノダマリコは、彼の知り合いの病院でアルバイトしながら看護学校に、マエダアツコとタカハシミナミは介護士になるための学校を受験すべく猛勉強している マユの父親は、優子に、秘書になるための学校を受験することをすすめたが、優子は辞退した マジ女を卒業したら、日本全国を旅してみたいと考えているのだった せっかく勉強したのだから、この国の介護や地域包括ケアについてもっと知りたい マユの父親は残念がったが、秘書になるよりも、その方が優子の可能性を育てられるかもしれないと、協力することを約束した












キザキユリアはキモトカノンと久々に話をした
「結局、ワタナベ(ワタナベミユキ)は、姿を消したそうだ 考えてみれば、不思議な縁だった 奴から、乃木坂にかちこむから助太刀して欲しいって頼まれたときには、何でわたしなんだってな(笑) ただ、さや姉(ヤマモトサヤカ)に頼めないってことは、さや姉には知られたくないってことだろ わたしは、のん(キモト)のことを考えたよ もし、のんが、同じ状況でワタナベに頼んだら、奴はきっと来るんだ だから、わたしにも頼めるんだってな 奴もまっすぐなんだよ あの件に、さや姉がどう絡んでいたのかは、奴以外は知らない わたしは興味なかったし、聞けば、奴は失望しただろ なあ、のん、わたしたちもマジに生きよう マジに生きるってことは、馬鹿みたいに見えることもあると思うし、損することだって多いと思う しかし、適当に、楽な道を選んだとしても、結果はそれなりだ 奴はマジに生きた だから、絶対に戻ってくる 今回のことが、奴をさらに大きくすると信じているし、わたしたちも恥をかかないように頑張らなきゃならない」




キモトはキザキを眩しそうに見つめた
「実は、わたし、ユリアに嫉妬してたんだ なんでユリアばっかり可愛がられるのかってね でも、ワタナベさんのことを、そう考えられるユリアだからこそ、皆から慕われるんだね ワタナベさんも、きっと、ユリアに頼んでよかったって思ってるよ それよりもさ、さっきの話 わたしのことを考えたって、どういうこと?」


キザキは、照れて目を伏せた
「のんも、わたしのために悩んでくれるに違いないって ワタナベは、さや姉のため、なんばのために戦ったんだ のんも、わたしのため、栄のために戦ってくれるってね なあ、のん、これからが大変だ 優子さんたちが卒業されたあとは、わたしたちがラッパッパとマジ女グループを引っ張っていかなきゃならねえ いろいろ迷惑かけると思うが、力になってくれ のんには、栄を引っ張ってもらわなきゃならねえ それから、博多にも注意してくれ 噂じゃ、さっしー(サシハラリノ)さんが、学校に残るみたいだ あそこには、トモナガミオとタシマメルがいるからなあ うちも、うかうかしてられないぜ」
キザキとキモトの視線がぶつかる キモトは思った、マシにならなきゃと キザキの期待を裏切るわけにはいかない キモトは、生まれて初めて、信頼されることの怖さを知った…
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病院から戻ってきたヤマモトサヤカを、なんばの生徒たちが取り囲む

「意識は取り戻した」
ヤマモトの言葉に、一同が飛び上がって喜んだ
「けいっち(ジョウニシケイ)、ミユキが皆を頼むって」


ジョウニシの円らな瞳に涙が浮かぶ
「さや姉、ごめん ミユキを追い詰めたんはうちらや ミユキはなんも悪ない 降伏するから、ミユキのところに行かせて」


「わかった ただし、けいっちとあかりん(ヨシダアカリ)とりいちゃん(コンドウリナ)だけやで 大勢で行ったら迷惑や 皆、ええな」
ヤマモトの有無を言わさぬ雰囲気に、意義を唱える者はいない ヤマモトは、この三人は帰ってこないであろうと考えていた おそらく、ミユキと連れ立ってなんばを出ていく 彼女たちのプライドが許さないに違いない 渡辺派が存続すれば、ラッパッパから警戒されるのは必至で、ワタナベたちは忠誠を誓わなければならない そのような屈辱に耐えてまで、彼女たちがなんばに残るとは思えないからだ
「けいっち、あかりん、りいちゃん、いつでも戻ってきてや」
ヤマモトは、三人とハグする 出会ってから一年半、切磋琢磨しながらマジ女のてっぺんを目指してきた仲間たちである


「さや姉、頑張ってや なんばがてっぺん獲る日を楽しみにしてるで」
ジョウニシが微笑む
「行くで」
三人は校門から飛び出していった


「シュウ、われが臨時で大将になれ 今からラッパッパに降伏しにいく われがきっちりと事後処理せいよ 物事は終わりが肝心やで」
ヤマモトがヤブシタシュウを伴って、ラッパッパの本陣に向かう これで、なんば渡辺派のクーデターは終結をみることとなった












コジママコの働きで、博多の反乱軍も制圧された 博多からラッパッパ軍に参加したのはトモナガミオとタシマメルだけであったので、博多の兵隊のほとんどが反乱軍に加わったことになる 優子は、新生ラッパッパの執行部に、博多から誰を登用すべきかを、サシハラに決めさせることにした メルミオはまだ一年なので、二年生から選ぶことが望ましい サシハラは、ミヤワキサクラとコダマハルカを指名した ふたりが執行部入りできるなら、博多は全面的にラッパッパに協力するという 優子は、キザキユリア、ワタナベマユ、シマザキハルカ、マツイジュリナ、ヨコヤマユイ、ヤマモトサヤカら新執行部のメンバーと協議し、全員一致で承認することとなった














キザキユリアの執行部入りを聞いて、栄の反乱軍の大将を任されたフルカワアイリは、降伏することを決めた 今回の戦争で、栄の実力はじゅうぶん示せたし、何よりも可愛いユリアの出世が、栄の兵隊たちを喜ばせたのだった 吉報を伝えにきたナカニシユカとフルカワが握手をする


「ユリアを頼むぞ 私たちはもうすぐ卒業だ それまでに、マジ女における栄の地位を確実なものにする必要がある 私たち先輩が、後輩たちに残してやれるのは栄のプライドだけだ ダースー(スダアカリ)と力を合わせて、ユリアを盛り立ててやってくれ」


ナカニシはフルカワをハグした
「ありがとう じゃあ、俺と一緒に来てくれ これからのことを、優子さんや格校の代表と話し合わなければならない」




こうして、マジ女版西南の役とも考えられるワタナベミユキのクーデターは、ラッパッパ軍の勝利のうちに幕を閉じた これによって、マジ女グループは、ラッパッパによって牽引されることになる 優子、マエダアツコ、タカハシミナミが目指す地域包括ケアシステムを確立すべく、ラッパッパ執行部は東奔西走することになるのだが、道程はまだまだ遠い まずは、仙台に仮設されたラッパッパ学園の舵取りを成功させる必要がある 新部長となるワタナベマユは、夜明けの空を眺めながら、心に誓った
“前しか向かねえ”