自律稼働型マッチングOSへの助走:暗黙知をシステムへ解き放つ
2025年12月某日。昨日一日を費やして行った作業は、私が掲げている「2028年11月23日、自律稼働型OSへ移行する」という構想を、具体的な実務工程に落とし込むための重要な一歩であった。これまで、経営者育成研究会におけるマッチングの核心は、私自身の経験、記憶、そして対話の中から紡ぎ出される文脈理解という「暗黙知」に依存してきた。数千件に及ぶ面談の蓄積に基づく個人的な判断は、確かに一定の成果を生んできた。しかし、それは同時に「私が不在になれば機能しない」という属人化の課題を内包している。この限界を突破し、属人性を排した持続可能な仕組みを構築することこそが、今回の作業の真の目的である。1,000件のリストをAIが扱える構造へまず着手したのは、約1,000件におよぶ経営者リストの構造化である。単なる名簿という「情報の羅列」を、AIが意味を解釈し判別可能な「データ」へと変換する作業だ。専用のAIツールを活用し、事業領域、成長フェーズ、経営課題、価値観、強み、リソースなど、最大16の属性項目を一件ずつ抽出した。ここで重視したのは、効率よりも精度である。一括処理による大まかな分類を避け、5件ずつ丁寧に内容を精査しながら、200回繰り返すという愚直な工程を貫いた。現時点ではデータの揺らぎや定義の不一致といった課題は残るものの、1,000人の情報を「意味を持つ構造体」として整理したことで、AIが文脈を解釈するための堅牢な土台は構築できたと確信している。マッチングロジックの実装と検証次なる段階は、マッチング工程のAI化である。会員コードから人物を特定し、「特定領域の企業」「規模感」「現在のフェーズ」といった複雑な条件に対し、データベースから客観的な根拠を持って候補を提示する仕組みを構築した。現在はまだ、AIの提示する候補が私の直感的な判断と乖離する場面も少なくない。そのため、ロジックの修正と検証を執拗に繰り返している。特に、事実に基づかない情報を生成する「ハルシネーション」の排除を最優先事項とし、アップロードした内部データ以外の情報を出力させない厳格な制約を設けた。これは、単に「優れた知能」を作ることではない。実務において、経営者の命運を左右する判断の材料として「信頼に足る出力」を得るための、極めて実務的な調整作業である。蓄積された対話ログの活用あわせて、過去1年分、約2,000件におよぶ面談ログ(TLDVの文字起こしデータ)の構造化も開始した。過去の悩みや強みの変遷を整理し、次回の面談前にAIが適切な論点を提示する仕組みだ。これは単なる効率化の追求ではない。人間同士の関係性や対話の蓄積を、個人の脆弱な記憶に頼らずに保持し、次なる意思決定の確かな材料とするための試みである。過去の文脈をAIが保持することで、対話はより深い次元へと進むことができる。熟練工から、仕組みの設計者へこれまでの私は、自身の感覚と経験を頼りに道を切り拓く「熟練工」のような役割を果たしてきた。しかし、組織としての進化を目指すならば、そのプロセスを分解し、センサーと自動制御を備えた「仕組み」へと置き換えていかなければならない。昨日一日の作業で、ようやくシステムは試運転を開始した。精度向上に向けた調整の余地は多分に存在するが、「自ら道を掘る人」から「誰でも道を掘れる仕組みを設計する人」への転換は、すでに不可逆的な流れとして始まっている。2028年に向けた工程表の上に、ようやく確かな一歩を刻むことができた。人間が考えることに集中し、AIが適切な接続を担う。その理想の形に向け、今後も淡々と、かつ緻密に検証を積み重ねていく。