進歩進歩主義といふもの、あさましうて、をかし。
進みて進み、変へて変へ、
さきへさきへと急ぎたるさま、
いとせわしなく、いとさわがしきものなり。

「アップデートこそ正義なり」
「変はらぬものは悪なり」
などとのたまふ者の、
よくよく見れば、内なる空洞、風に鳴りぬる。

何を変へるかも定かならず、
変へること自体が目的となりぬる時、
そこにあるのは、ただの動くことへの依存なり。

うつろなる眼で未来を語り、
「時代が求めている」と、声を張る。
されどその時代とやら、
誰がつくりしものか、問うこともなく。

古きを知らずして新しきを語り、
重みを知らずして軽みを良しとす。
ことばは軽く、理屈は早口にて、
おのれすら追いつかぬほどの進歩を崇むなり。

真に進む者は、静かに一歩を踏みしめるを知らず。
己が加速を誇りて、
つひに何を見失ひたるかも気づかぬまま、
この世をソフトウェアのごとく語りおる。

かやうなる者どもに申す。
進むとは、変ふるとは、
ほんにそれほど、嬉しきことかと。

変はらぬことに美を見いだし、
足を止めることに勇を見いだす者も、
また、ひとつの進歩にてあらむかし。