先のエントリーでも書いたように燃料電池の種類と現状について簡単に書きたいと思います。


燃料電池は水の電気分解の逆反応とよく例えられますが
水素イオンが移動する電解質によって、以下のように分類されます。
(詳しい原理はここでは書きません)


◆アルカリ電解質形燃料電池 (AFC)
 電解質にKOH(水酸化カリウム)等のアルカリ水溶液を使用することからこの名がついています。
 事実上、最初に実用化された燃料電池と言ってよいでしょう。
 NASAのアポロ計画はもとよりスペースシャトルにも搭載されています。

 電極に貴金属を使用しなくて済むのですが、
 二酸化炭素が燃料や酸素に混じっていると電解質が劣化してしまうという問題がある
 (つまり酸化剤に空気が使えない)ため、
 主に液体酸素・液体水素の扱いに長けている宇宙開発で利用されてきました。

 主要メーカー:United Technologies(アメリカ)

 
◆固体高分子形燃料電池 (PEFC,PEM,PEMFC)
 2000年代に入ってから急激に注目を浴びた燃料電池です。
 電解質に固体高分子膜(イオン交換膜)を使用することからこの名が(以下略

 60~80℃と比較的低温で運転できることから、
 自動車用・定置用(家庭用)として開発が進められてきており、
 家庭用はエネファームとして、
 自動車用はトヨタ、ホンダ、日産、スズキ、GM、ダイムラー、VWといった主要自動車メーカーで
 実用化されています(自動車については、まだ商用化とは言えませんが・・・)

 現在は大幅なコストダウンを求められており、
 特に電極にPtやRuなどの貴金属を使用することからその大幅な削減にメーカーは躍起になっています。

 同じPEFCとは言え、自動車用と家庭用では、まるっきり求められる性能が違います。

 ⇒ 家庭用: 運転寿命約4万時間(連続運転で約5年)
        都市ガス・LPG・灯油などを原燃料として運転

 ⇒ 自動車用:運転寿命約5千時間
        純水素を燃料にするが、振動や酷暑・極寒といった厳しい環境下で運転

 主要メーカー:
 家庭用 = 東芝燃料電池システム、Panasonic、ENEOSセルテック(旧・三洋電機のFC部門)
      出光興産、荏原・バラード(2009年に解散※)
 
 その他定置用 = 世界中にいっぱいあるので割愛します。
 
 自動車用 = トヨタ、ホンダ、日産、スズキ、GM、ダイムラー、VW、その他

 ※なお、2000年代の燃料電池フィーバーのきっかけとなった
  カナダのBallard Power Systems
  自動車用は元より、家庭用についても日本の荏原製作所と合弁で開発をしていましたが
  2007年11月に自動車用燃料電池システム事業をダイムラーとフォードに売却。
  また、日本で家庭用の開発を行っていた荏原・バラードも2009年に解散となりました。
  (ちなみに創業者トム・コペルの「燃料電池で世界を変える」は有名な著作です。)

 
明日以降は、その2として以下の燃料電池の説明を書いていきたいと思います。

◆りん酸形燃料電池 (PAFC)

◆溶融炭酸塩形燃料電池 (MCFC)

◆固体酸化物形燃料電池 (SOFC)


では、今日はここまで。
さて、先のエントリーで書いた通り、
水素はH2の形では自然界にほとんど存在しておらず
水素を製造する過程で、温室効果ガス(GHG)とされているCO2を排出する
ということを書きました。

では、水素を製造する過程でCO2を排出するにもかかわらず、
なぜ燃料電池が良いとされているか。
このエントリーではそのあたりを簡単に説明していきたいと思います。


発電所を発電場所と需要家(ユーザー)との間の距離によって分類すると
「オンサイト発電」と「オフサイト発電」に分けられます。

 ◆オンサイト発電とは、電力を使用する場所のすぐ横で発電すること。

 ◆オフサイト発電とは、電力を使用する場所から遠く離れた場所で発電すること。

蕎麦屋に例えるなら、
エントリのタイトル通り、

 ◆オンサイト発電は立ち食い蕎麦

 ◆オフサイトは出前蕎麦

といったところですか。

実際の発電所の例で言うならば、わかりやすいところでは、
オンサイト発電は、妻夫木君やエネゴリ君がCMやってる「エネファーム」、
オフサイト発電はいわゆる「火力発電所」があります。


いわゆる火力発電所というのは、皆様ご存知の通りほぼ全てが海岸沿いに建設されています。
火力発電は、原油や天然ガスを燃焼させて水蒸気を作り出し、巨大なタービンを回して発電するわけですが、
その膨大な余剰熱を処理するために大量の水を必要とするため海岸線に位置するわけです
(これが大陸だと大河の河岸もあり)。


では、火力発電所の膨大な余剰熱はどうなるのか。

熱は貯蔵したり運搬し難いので、
基本的には温められた海水として海に還流されるだけです。
(熱を遠くに持っていけないので、そばに温浴施設や温水プールがあったりしますね)


そこで、発電で出る熱をその場で使えるようにできればより効率的、
ということで登場してきたのが燃料電池などのオンサイト発電で行われる
コージェネレーション発電です。

電力と熱を利用できる発電方法なのでコージェネレーション(コージェネ)、
一方で、電力しか利用できない発電はモノジェネレーション(モノジェネ)と呼びます。

これは、まさに立ち食い蕎麦と出前蕎麦の関係で
できたてのアツアツの出汁で蕎麦を食べられ、
お腹もいっぱいで、かつ身体も温まるのがオンサイト発電のコージェネレーション。

一方で、若干ぬるくなった出汁で蕎麦を食べて、
お腹は満腹になるけども、身体はあまり温まらないのがオフサイト発電のモノジェネレーション。

というとイメージが沸くでしょうか?


現在の最新鋭の火力発電所の発電効率は約50%と言われています。
(ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたコンバインドサイクル発電の場合)
但し、前述のように熱は利用できません。

ちなみに、ここで言う発電効率は、元になる燃料が持つエネルギーに対して、発電した電力の持つエネルギーの割合です。

対する燃料電池の発電効率はだいたい35%~45%程度。
但し、余剰熱がお湯として利用できます。

というわけで、
総合効率(元になる燃料が持つエネルギーに対して、
発電により得られた利用可能な電力と熱の持つエネルギーの割合)で見ると、
燃料電池の総合効率は80%を超えることになります。

つまり、効率的にエネルギーを使えるので、CO2排出量も減らせる、
というのが燃料電池のメリットとされており、開発が行われている次第です。

長くなりましたが、今回はここまでです。

次のエントリでは、燃料電池の種類と開発の現状について概要をお話したいと思います。

やはり水素の話をしようとすると、まず最初に出てくるのは燃料電池です。


新エネルギー関連の展示会で説明員をやっていると

燃料電池は一切CO2を出さないという幻想を抱いている方が未だに多数いらっしゃいます。



もちろん、純水素を燃料として使用して

水素と空気中の酸素を反応させれば、電気の他に出てくるのは水だけです。


しかしながら、水素は水素分子、つまりH2の形では自然界にはほとんど存在しません。



では、水素をどのようにして作るのか。

もっとも単純な方法としては、

水を電気分解して、水素ガスと酸素ガスとして取り出すことですね。

当然、電力を使用します。

つまり、燃料電池で発電するための燃料を製造するために電力が必要ということですね。



もうひとつは、

天然ガス(メタンCH4が主成分)や灯油、ガソリンなどの炭化水素類を水蒸気と反応させて

水素を取り出します。

この化学反応を水蒸気改質(Steam Reforming)と呼びます。

(メタンの水蒸気改質反応の例: CH4 + 2H2O = 4H2 + CO2 )


上記の化学反応式の例から明らかな通り、水素の製造過程でCO2を排出することになります。


つまり、燃料電池はCO2を出さない究極のエコを実現する、という謳い文句は幻想と言わざるを得ないわけです。

(あくまで、現状では、ですが)


ところが、実際にはまだ信じている方は多数いらっしゃいます。

このように一般の方が幻想を抱くようにミスリードしたのは、もちろん業界の責任ではあると思います。

(かく言う私も幻想を抱いてこの業界に入った人間ですので・・・)


とは言え、幻想だから開発する意味がない、とは言えません。


次回はそのあたりから書いていきたいと思います。