今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。
野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに 使ひけり。
名をば、さぬきの造となむいひける。
その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。
怪しがりて、寄りて見るに、筒 の中光りたり。
それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり。
翁、言ふやう、「我、朝ごと夕ごとに見る竹の中におはするにて、知りぬ。子となり給ふべき人なめり。」とて、手にうち入れて、家へ持ちて来ぬ。
妻の嫗に預けて養はす。
うつくしきこと限りなし。いと幼ければ籠に入れて養ふ。
帝、かぐや姫をとどめて帰り給はむことを、飽かずくちをしくおぼしけれど、魂をとどめたる心地してなむ帰らせ給ひける。
これを帝御覧じて、いとど帰り給はむそらもなくおぼさる。
八月十五日ばかりの月に出でゐて、かぐや姫いといたく泣き給ふ。
人目も今はつつみ給はず泣き給ふ。
これを見て、親どもも、 「何事ぞ。」と問ひ騒ぐ。かぐや姫泣く泣く言ふ、 「さきざきも申さむと思ひしかども、必ず心惑ひし給はむものぞと思ひて、今まで過ごし侍りつるなり。
さのみやはとて、うち出で侍りぬるぞ。
おのが身はこの国の人にもあらず。
月の都の人なり。
それを昔の契りありけるによりなむ、この世界にはまうで来たりける。
今は帰るべきになりにければ、この月の十五日に、かのもとの国より、迎へに人々まうで来むず。
さらずまかりぬべければ、おぼし嘆かむが悲しきことを、この春より思ひ嘆き侍るなり。」と言ひて、いみじく泣くを、翁、 「こは、なでふことのたまふぞ。
竹の中より見付け聞こえたりしかど、菜種の大きさおはせしを、我が丈たち並ぶまで養ひ奉りたる我が子を、何人か迎へ聞こえむ。
まさに許さむや。」と言ひて、 「我こそ死なめ。」とて、泣きののしること、いと堪へがたげなり。
かぐや姫の言はく、 「月の都の人にて、父母あり。片時の間とて、かの国よりまうで来しかども、かく、この国にはあまたの年を経ぬるになむありける。
かの国の父母のこともおぼえず、ここには、かく久しく遊び聞こえて、ならひ奉れり。
いみじからむ心地もせず。
悲しくのみある。されど、おのが心ならずまかりなむとする。」と言ひて、もろともにいみじう泣く。
使はるる人々も、年ごろならひて、たち別れなむことを、心ばへなどあてやかにうつくしかりつることを見ならひて、 恋しからむことの堪へがたく、湯水飲まれず、同じ心に嘆かしがりけり。
立てる人どもは、装束の清らなること物にも似ず、飛ぶ車一つ具したり。
羅蓋さしたり。
その中に、王とおぼしき人、家に、 「みやつこまろ、まうで来。」と言ふに、猛く思ひつるみやつこまろも、物に酔ひたる心地して、うつぶしに伏せり。いはく、 「汝、幼き人。いささかなる功徳を、翁作りけるによりて、汝が助けにとて、片時のほどとて下ししを、そこらの年ごろ、そこらの黄金賜ひて、身を変へたるがごとなりにたり。かぐや姫は罪を作りたまへりければ、かく賤しきおのれがもとに、しばしおはしつるなり。罪の限り果てぬれば、かく迎ふるを、翁 は泣き嘆く。あたはぬことなり。はや返したてまつれ。」と言ふ。
翁答へて申す、 「かぐや姫を養ひたてまつること二十余年になりぬ。『片時』とのたまふに、あやしくなりはべりぬ。また異所にかぐや姫と申す人ぞおはしますらむ。」と言ふ。
「ここにおはするかぐや姫は、重き病をしたまへば、えいでおはしますまじ。」と申せば、その返り事はなくて、屋の上に飛ぶ車を寄せて、 「いざ、かぐや姫、穢き所に、いかでか久しくおはせむ。」と言ふ。
立て籠めたる所の戸、すなはちただ開きに開きぬ。
格子どもも、人はなくして開きぬ。嫗 抱きてゐたるかぐや姫、外にいでぬ。えとどむまじければ、たださし仰ぎて泣きをり。
竹取、心惑ひて泣き伏せる所に、寄りてかぐや姫言ふ、 「ここにも、心にもあらでかくまかるに、昇らむをだに見送りたまへ。」と言へども、 「なにしに、悲しきに、見送りたてまつらむ。
我をいかにせよとて、捨てては昇りたまふぞ。具して率ておはせね。」と、泣きて、伏せれば、御心惑ひぬ。
「文を書き置きてまからむ。恋しからむをりをり、取りいでて見たまへ。」とて、うち泣きて書く言葉は、 「この国に生まれぬるとならば、嘆かせたてまつらぬほどまではべらむ。
過ぎ別れぬること、かへすがへす本意なくこそおぼえはべれ。
脱ぎ置く衣を形見と見たまへ。
月のいでたらむ夜は、見おこせたまへ。
見捨てたてまつりてまかる、空よりも落ちぬべき心地する。」と書き置く。
天人の中に、持たせたる箱あり。天の羽衣入れり。
またあるは、不死の薬入れり。一人の天人言ふ、 「壺なる御薬奉れ。穢き所の物きこしめしたれば、御心地悪しからむものぞ。」とて、持て寄りたれば、いささかなめたまひて、少し、形見とて、脱ぎ置く衣に包まむとすれば、在る天人包ませず。御衣をとりいでて着せむとす。
その時に、かぐや姫、「しばし待て。」と言ふ。
「衣着せつる人は、心異になるなりといふ。もの一言言ひ置くべきことありけり。」と言ひて、文書く。天人、「遅し。」と、心もとながりたまふ。
かぐや姫、「もの知らぬこと、なのたまひそ。」とて、いみじく静かに、朝廷に御文奉りたまふ。あわてぬさまなり。
「かくあまたの人を賜ひてとどめさせたまへど、許さぬ迎へまうで来て、取り率てまかりぬれば、口惜しく悲しきこと。
宮仕へ仕うまつらずなりぬるも、かくわづらはしき身にてはべれば、心得ずおぼしめされつらめども、心強く承らずなりにしこと、なめげなるものにおぼしとどめられぬるなむ、心にとまりはべりぬる。」とて、今はとて天の羽衣着るをりぞ君をあはれと思ひいでけるとて、壺の薬そへて、頭中将呼び寄せて、奉らす。
中将に、天人取りて伝ふ。
中将取りつれば、ふと天の羽衣うち着せたてまつりつれば、翁を、いとほし、かなしとおぼしつることも失せぬ。
この衣着つる人は、物思ひなくなりにければ、車に乗りて、百人ばかり天人具して、昇りぬ。
その後、翁・嫗、血の涙を流してまどへどかひなし。
あの書き置きし文を読み聞かせけれど、「なにせむにか命も惜しからむ。たがためにか。
何事も用もなし。」とて、薬も食はず、やがて起きもあがらで病みふせり。 中将人々引き具して帰りまゐりて、かぐや姫をえ戦ひとめずなりぬること、こまごまと奏す。
薬の壺に御文そへ、まゐらす。
広げて御覧じて、いといたくあはれがらせたまひて、物もきこしめさず、 御遊びなどもなかりけり。
大臣・上達部を召して、「いづれの山か天に近き。」と問はせたまふに、ある人奏す。
「駿河の国にあるなる山なむ、この都も近く、天も近くはべる。」と奏す。
これを聞かせたまひて逢ふこともなみだにうかぶ我が身には死なぬ薬も何にかはせむ。
かの奉る不死の薬に、また壺具して、御使ひに賜はす。
勅使には、つきのいはかさといふ人を召して、駿河の国にあなる山の頂にもてつくべきよし仰せたまふ。
嶺にてすべきやう教へさせたまふ。御文・不死の薬の壺ならべて、火をつけて燃やすべきよし仰せたまふ。
そのよし承りて、つはものどもあまた具して山へ登りけるよりなむ その山をふじの山とは名づけける。
その煙いまだ雲の中へ立ちのぼるとぞ言ひ伝へたる。
今日・・・・
長男の授業参観日で美人な担任の先生が「古典」を教えてました![]()
先生曰く
「現在の表現で表すとブログやツィッターと・・・・・」云々![]()
1000年前の方も結構楽しんでいたんだね
古典を読んで転んだよ![]()
コテン![]()
やっちゃった
(T▽T;)