今回の台風で被害に遭われた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
私自身も今回の台風で、被害が出ました。
実際に被害を目の前にすると、
「どこへ連絡すればいいのか」
「誰が復旧するのか」
「どのくらいお金がかかるのか」
次々と現実的な問題が出てきます。
そして、もしこれが会社や店舗、工場、倉庫だったら。
経営者として真っ先に考えなければならないのが、
資金繰りです。
災害直後はどうしても、
「壊れたものを直さなければ」
という意識が先に立ちます。
もちろん復旧は重要です。
しかし財務の立場から言えば、その前に一度確認してほしいことがあります。
この災害によって、会社の現金がいつまで持つのか。
ここを把握しないまま復旧費を使い始めることは、非常に危険です。
災害は「売上」と「支払い」に違うスピードで影響する
例えば店舗が浸水した。
営業できない。
当然、売上は止まります。
しかし、
家賃。
給与。
社会保険。
借入返済。
リース料。
既に発注した仕入代金。
こうした支払いまで一緒に止まってくれるわけではありません。
つまり災害時には、
入金だけが急に細くなり、支払いは今まで通り発生する
という状態になりやすい。
さらに、
設備修理。
車両。
什器。
原材料。
清掃。
仮店舗。
といった復旧資金まで必要になります。
平常時の資金繰りとは全く違います。
一番やってはいけないのは「とりあえず自己資金で直す」
被害が出ると、
「まず直そう」
「手元に現金があるから払ってしまおう」
と考えがちです。
でも私は、経営者には一度止まって考えてほしいと思っています。
例えば会社に3,000万円の現預金がある。
復旧に1,500万円必要。
だから1,500万円払う。
一見すると問題なさそうです。
でも翌月に、
給与800万円。
仕入1,000万円。
借入返済300万円。
税金500万円。
の支払いがあったらどうでしょう。
しかも営業停止によって入金は通常の半分。
この会社にとって、その1,500万円は本当に「使っていい現金」だったのでしょうか。
災害時ほど、
現預金残高と、使っていい現金を分けて考える
必要があります。
被災したら、私はまず5つ確認します
経営者であれば、復旧作業と並行して最低でも次の5つを確認してほしいと思います。
-
今ある現預金はいくらか。 銀行口座をすべて集め、今日時点の現金を確定します。
-
今後3か月の入金はいくら減るのか。 営業停止、納品遅延、キャンセルなどを反映して、通常の売上予測を一度捨てます。
-
絶対に払わなければならない支払いはいくらか。 給与、仕入、家賃、借入返済などを日付順に並べます。
-
復旧に必要な資金はいくらか。 「今すぐ必要」「1か月以内」「後でもいい」に分けて、復旧費を一気に使わないようにします。
-
保険・融資・公的支援で外から入れられる資金はいくらか。 自己資金だけで復旧しようとせず、使える制度を同時並行で確認します。
これだけでも、
何月何日に現金が一番少なくなるのか
が見えてきます。
私が普段から資金繰りで重視している「最薄残高」です。
災害時には、この数字が会社の生死を左右します。
今回の台風では、すでに資金繰り支援が始まっている
今回の令和8年台風第25号を受け、日本政策金融公庫は特別相談窓口を設置しています。
中小企業・小規模事業者向けには、国民生活事業の「災害貸付」、中小企業事業の「災害復旧貸付」などが案内されています。
公表されている制度では、国民生活事業の災害貸付は既存制度に3,000万円を上乗せ、中小企業事業の災害復旧貸付は別枠1億5,000万円。運転資金については最長10年、設備資金は最長20年とされている制度があります。
当然、実際の融資可否や金額は企業ごとの状況によります。
しかし重要なのは、
「困ってから探す」のではなく、被害が出た段階で金融機関に相談すること。
です。
小規模企業共済に加入している経営者も確認してほしい
小規模企業共済に加入している方には、今回の災害について「災害時貸付け」も適用されています。
9月24日時点では、要件を満たす契約者について、年0.9%、原則1,000万円までなどの条件が公表されています。
担保・保証人不要で、必要書類が整えば迅速な貸付が可能とされています。
小規模企業共済というと、
「経営者の退職金」
というイメージが強いですが、
こういう非常時の資金調達手段にもなる
ということは知っておいていいと思います。
税金も「期限だから払う」だけではない
もう一つ、資金繰りで大きいのが税金です。
災害により申告や納付が難しい場合には、国税について申告・納付期限の延長制度があります。
また、災害により相当な損失を受けた場合などには、一定の要件のもとで納税の猶予を受けられる制度もあります。
会社の現金が厳しい時に、
「税金だから何が何でも予定日に全部払う」
と決めつけるのではなく、
税務署や税理士へ早めに相談する。
これも立派な資金繰りです。
保険金は「入る金額」だけではなく「入る時期」を確認する
火災保険や事業用保険に加入している会社も多いと思います。
ここで財務的に重要なのが、
いつ入金されるのか
です。
1,000万円の保険金が出る。
だから大丈夫。
ではありません。
入金が3か月後なのに、復旧業者への支払いが来月なら、その間を埋める資金が必要です。
だから、
保険金見込額。
支払時期。
復旧代金の支払時期。
この3つを同じ資金繰り表に入れる。
これだけで判断はかなり変わります。
銀行には「被害が出ました」ではなく、数字を持って相談する
金融機関への相談も同じです。
「台風で被害が出たのでお金を貸してください」
だけではなく、
例えば、
現預金3,000万円。
通常月商5,000万円。
災害によって今後2か月は売上50%減少見込み。
復旧費1,500万円。
保険金1,000万円を申請予定。
3か月後の最薄現預金は500万円。
そのため運転資金として2,000万円必要。
ここまで整理して持っていく。
金融機関から見ても、
必要資金と返済の考え方が明確な会社
の方が話を進めやすい。
災害という非常事態だからこそ、数字を整理する意味があります。
災害時こそ「借金を増やしたくない」は危険なこともある
経営者によっては、
「災害なのに借金まで増やしたくない」
と思う人もいるでしょう。
その気持ちは分かります。
しかし、
手元資金を全部使って復旧する。
その後で資金がなくなる。
こうなる方が危険です。
借入は悪ではありません。
特に災害のような一時的な資金需要に対しては、
会社のキャッシュを守るために金融を使う
という考え方があります。
借りなくても済む会社が、あえて借りて現預金を厚くする。
私はそういう判断も十分ありだと思っています。
復旧だけではなく「再開後」まで考える
もう一つ忘れてはいけないことがあります。
災害が終わったからといって、
翌日から売上が100%戻るとは限りません。
客足が戻らない。
取引先も被災している。
物流が止まっている。
仕入先が復旧していない。
従業員自身が被災して出勤できない。
こうしたこともあります。
だから資金繰りは、
復旧までではなく、通常営業に戻るまで
作るべきです。
私は最低でも3か月、状況によっては6か月先まで見た方がいいと思っています。
災害で改めて感じた「余力」の重要性
今回、自分自身の身近な場所でも被害が起きて改めて感じました。
災害は、
いつ起こるか分かりません。
そして起きてから、
「もう少し現金を持っておけばよかった」
「保険を確認しておけばよかった」
「銀行と話をしておけばよかった」
と思っても遅いことがあります。
企業にとって現預金は、
ただ眠っているお金ではありません。
会社に時間を与えてくれるもの
です。
1か月考えられる。
3か月耐えられる。
6か月立て直す時間がある。
この「時間」を買ってくれるのがキャッシュです。
災害時には、その意味が非常によく分かります。
最後に
被災した直後は、誰でも混乱します。
だからこそ、
まず安全を確保する。
被害状況を記録する。
保険会社へ連絡する。
行政や支援機関へ相談する。
そして会社経営では、
資金繰りを作る。
壊れたものを直すことはもちろん重要です。
でも、
会社そのものが資金ショートしてしまったら、復旧後に事業を再開できません。
今回の台風で被災した経営者の方に一つだけ伝えるとしたら、
「全部、自分のお金で何とかしようとしないでください。」
ということです。
公的融資。
金融機関。
信用保証協会。
保険。
税金の猶予。
共済制度。
使えるものは確認する。
そして、
会社の現金をできるだけ守りながら復旧する。
それも経営者の重要な仕事です。
一日も早い復旧を心から願っています。
そして今回被害を受けなかった会社も、
「自分たちは大丈夫だった」で終わらせず、
現預金はいくらあるのか。
保険は十分なのか。
取引先が被災したらどうなるのか。
銀行との関係はできているのか。
一度確認してみてほしいと思います。
災害への備えは、防災用品だけではありません。
会社にとって最大の防災の一つは、財務を強くしておくことです。
■ レスキュル株式会社
経営・財務を軸に、
中小企業や成長企業の伴走支援を行っています。
数字だけを見るのではなく、
「人が育ち、組織が続く仕組みづくり」を大切にしています。
領域:経営/財務/事業/EC
■ ATELIER SAZANCA(アトリエサザンカ)
「時間を大切にする」という想いから生まれた、
手づくり腕時計のブランドです。
素材の個性と職人の手仕事を活かし、
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暮らしの中で使われ続ける家具を届けたい、
そんな想いからスタートした家具ブランドです。
流行ではなく、時間とともに価値が深まることを大切にしています。
