冷凍メンチカツは冷凍食品に非ず(あらず)!
朝方雨が降ったようですが、大阪は本日は快晴でいかにも小春日和といったお天気になっています。
ちなみにこの「小春日和」という言葉ですが、まさしく今頃の時期の季語のようです。ご参考までに。
ということで、本日の話題ですが、前回のブログで動静を見守りたいと言っていた冷凍メンチカツの件で続報が出ましたのでご報告したいと思います。
まず謝らなければならないのが、前回は冷凍メンチカツを「冷凍食品」だと思って話を進めていたのですが、実はこの冷凍メンチカツは定義上冷凍食品ではなかったということです。
まぁ、実際の表示も見ずに話をしていたので、「冷凍」メンチカツという商品名と食べる前に揚げる、つまり調理しなければならないということから、「加熱後摂取冷凍食品であって、凍結させる直前に加熱されたもの以外のもの」ということで話をさせていただいていたのですが、これが冷凍食品ではないということであれば、表示にはこの「加熱後摂取冷凍食品」の表示はなく、冷凍商品のカテゴリーには入っていないことが分かったと思うのですが、先走ってお話をしてしまって申し訳ありませんでした。
ではなぜこの冷凍メンチカツが冷凍食品のカテゴリーに入らないかというと、実は冷凍食品の定義は厳密に決められていて、
「食品衛生法」の成分規格における冷凍食品の定義:製造し、又は加工した食品(清涼飲料水、食肉製品、鯨肉製品、魚肉ねり製品、ゆでだこ及び ゆでがにを除く。)及び切り身又はむき身にした鮮魚介類(生かきを除く。)を凍結させたもので あって、容器包装に入れられたものに限る。
「JAS法」の規格および品質表示基準における冷凍食品(調理冷凍食品に限る)の定義:農林畜水産物に、選別、洗浄、不可食部分の除去、整形等の前処理及び調味、整形、加熱など の調理を行ったものを凍結し、包装し及び凍結したまま保持したものであって、簡便な調理をし、 又はしないで食用に供されるものをいう。
と定められているとのことです。また、一般社団法人 日本冷凍食品協会では、冷凍食品とは何ですか?という質問に対して、
さまざまな食品の品質(風味、食感、色、栄養、衛生状態など)を、とれたて・つくりたての状態のまま長い間保存するために、冷凍食品が生まれました。
冷凍食品は、通常、次の4つの条件を満たすようにつくられています。
- 前処理している
新鮮な原料を選び、これをきれいに洗浄したうえで、魚でいえば頭・内臓・骨・ひれなどの不可食部分を取り除いたり、三枚おろしや切身にしたり、その切身にパン粉をつけて油で揚げるだけで魚フライができるように調理するなど、利用者に代わってあらかじめ前処理をしています。
- 急速凍結している
凍結するときに、食品の組織が壊れて品質が変わってしまわないように、非常に低い温度で急速凍結しています。
- 適切に包装している
冷凍食品が利用者の手元に届くまでの間に、汚れたり、形くずれしたりするのを防ぐため、包装しています。包装には利用者に必要な取扱い、調理方法等のほか法律で決められている項目も含めて様々な情報が表示されています。
- 品温を-18℃以下で保管している
食品の温度(品温)を生産・貯蔵・輸送・配送・販売の各段階を通じ一貫して常に-18℃以下に保つように管理しています。
と回答しています。
詳しくはこちらをご覧ください。
また、JAS法による調理冷凍食品として、冷凍ハンバーグステーキ、冷凍ミートボール、冷凍コロッケ、冷凍カツレツなどの規格はありますが、この中に冷凍メンチカツは入っていません。
上述のような理由から冷凍メンチカツは冷凍食品のカテゴリーには入らないということになります。
では何になるのかというと、「そうざい半製品」ということになるのだそうです。
報道によると、「今回のカツのように油で揚げる調理手順などを残して販売される「そうざい半製品」が、国の衛生基準の対象から外れていることが感染拡大の背景にあることが分かってきた。」となっています。
また、「そうざい半製品はギョーザやカツ、コロッケなどが一般的で、材料の準備や味付けの手間をかけずに出来立てを食べられるのが特長。冷凍食品と似たパッケージで、同じコーナーで販売されることが多いが、冷凍食品のように細菌数の上限や保存温度などの基準はない。」ともなっています。
そのうえで、「厚労省生活衛生・食品安全部は「消費者にとって冷凍食品と区別しづらく、調理時の生肉加熱処理がおろそかになりやすい」と問題視。冷凍食品と同様に衛生基準を設けたり、そうざい半製品という名称の使用を禁じて冷凍食品に統合させたりする措置を検討する。」とのことです。
確かに私も表示を見ていなかったのでとっさに冷凍食品と勘違いしてしまいましたし、ましてや一般消費者の方に上記の冷凍食品の定義がどれだけ浸透しているかというとはなはだ心もとないと言わざるを得ませんので、何らかの措置は必要かもしれません。
しかし、冷凍食品という名称に統合するとなると、現在の定義では急速凍結が必要となってきますので、それも一朝一夕には対応しづらい気もします。
最近また頻発している異物の問題や、今回問題になっているO157をはじめとする微生物の問題など、食品製造業者の方にとっては頭の痛い問題が山積していますが、要はやるべきことをきちんとやる。そして、少しでもイレギュラーなことがあったらそれを見逃さない。まずはこういったことから始めてみてはいかがでしょうか。
先日話題にしましたタバコシバンムシが発生したときに私がまずしたことは、乾燥食品の中でイレギュラーな食品を探すことでした。そうしたらすぐに自分の意志で入手したものではない、人から頂いた「ゴーヤのスライス」に思い至り、大事に至る前に対処することができました。
ユッケによるO157食中毒事件や、浅漬けによるO157食中毒事件後の厚生労働省の対応の早さを考えると、今回の冷凍メンチカツについても早々に何らかの対策がなされると予想されますが、今後も何か情報があり次第お伝えしたいと思います。
それでは、本日はこのくらいで
秋真っ盛り!食中毒には注意しましょう!
さて今日は暦の上では「立冬」でした。
「立冬」とは、二十四節気のひとつで、Wikipediaでは、「初めて冬の気配が現れてくる日」となっています。
二十四節気には、この他に同じような季節を表す言葉として、「立春」「立夏」「立秋」があります。
それぞれ「立」の後に来ている季節がそろそろ始まるころということになるようですが、それはつまり言い換えると、「立」の後に来ている季節の一つ前の季節が盛りの頃ということになります。つまり「立冬」というのは最も秋が深まった季節だととらえることができるというわけです。
そしてこれからどんどん紅葉も深まっていくことになります。実は先日東北のほうに行く機会があったのですが、山形のほうでは写真にあるような感じで、山々が大分色づいてきていました。
そして秋といえば「食欲の秋」という言葉もあるように、食べ物がおいしい季節でもあります。
しかし、実は夏の暑さで胃腸が弱っている時期でもあります。
ですので、この時期は高温多湿の時期とはまた違った意味で食中毒には要注意の時期ということができます。特に体力の低下している人、お子さんやお年寄りは十分に注意する必要があります。
先日もまた冷凍メンチカツでO157による食中毒が発生してしまいましたが、重症化したのはやはりお子さんでした。
メーカーの出したコメントでは、加熱が不十分だったのではないかということでした。袋に書いてある調理方法では、温度を忘れてしまったのですが、170℃とか180℃とかで6分間となっていました。
何かの情報番組で、実際に揚げ時間を測って実験していたのを見たのですが、1分、3分、5分、そして規定の6分間で調理して中心温度を測っていました。その中で5分揚げても中心温度は70℃程度で、O157が死滅するといわれている75℃1分には達していませんでした。唯一その温度に達していたのがやはり既定の6分間揚げたもので、中心温度は85℃になっていました。
この実験を見る限り、確かに調理方法に書かれている温度と時間を守っていれば今回の食中毒は起こらなかったのかもしれません。
しかし、そもそもの問題として、厚生労働省の出している冷凍食品の規格基準には、
「加熱後摂取冷凍食品であって、凍結させる直前に加熱されたもの以外のものは、細 菌数(生菌数)が検体1gにつき 3,000,000 以下で、かつ、E.coli が陰性でなければ ならない。」
と規定されています。
そして、大腸菌の関係性は以下の図のようになっています。
つまり、ここでいうE. coliとは、この図でいうところの糞便系大腸菌群にあたると考えられますので、規格基準にある通りそこが陰性であれば必然的に病原性大腸菌も陰性となり、今回のような食中毒は起こらなかったのではないかと考えられます。
冷凍メンチを製造した食品加工会社に対しては、2日間にわたって食品衛生法に基づく立ち入り調査が行われ、衛生管理状態などに問題は見つからなかったとのことですが、では、どこで汚染が発生したのか?製品の微生物検査はしていたのか?疑問がたくさん残ります。調査は今後も継続されるそうですので、動静を見守りたいと思います。
最後に、「食」という字は「人」を「良くする」と書きます。食品製造に携わる私たちは、常にこのことを肝に銘じて業務にあたる必要があると改めて感じる出来事でした。
それでは皆さんも食中毒にはくれぐれも注意して、食欲の秋を満喫してください
タバコシバンムシ(煙草死番虫) Lasioderma serricorne 発生!
みなさんご無沙汰しています。
気が付いたらもう11月になろうとしていました
またしても間が空いてしまい申し訳ありません。
ところで、最近某お寿司屋さんでお寿司に虫が混入していた可能性があるという記事を目にしました。
食品企業にとって虫との戦いは永遠の課題ですね
と、他人事のように言っていますが、うちでもまたしても発生しました!虫が!!
数日前からなんか茶色い小さい虫がちょこちょこ現れるようになったのですが、数が少なかったこともあり最初はあまり気になりませんでした。
しかし、1匹ずつ退治していっても完全にはいなくならなくて、退治してもいつの間にか次のやつが現れています。
そこで思い出したのが、いつぞや大発生させてしまったアズキゾウムシの嫌な記憶でした。その時に比べて数は少ないのですが、発生の仕方からして部屋のどこかで湧いているに違いないと確信しました。
そこでまずはこやつが何者なのかを調べてみました。
「茶色い小さい虫」で検索するとすぐに出てきました。
どうやらタイトルに書きました「タバコシバンムシ(煙草死番虫) Lasioderma serricorne」という虫に間違いないようです。
死番虫って…
Wikipediaによると、「タバコシバンムシ(煙草死番虫) Lasioderma serricorne は、ジンサンシバンムシと並んで貯蔵食品害虫として知られるシバンムシの一種。世界中に広く分布し、日本国内にもほぼ全土に分布し、大多数の家庭で発生して乾燥食品などありとあらゆる乾燥動・植物質を食害する。」ということです。
となれば対処方法はアズキゾウムシの時と同じ、元を断つしかありません。
しかし、アズキゾウムシで痛い思いをしたので、あれ以来乾物に関しては、封を開けたものはすべて冷蔵庫に保管しており、自ら持ち込んだものからの発生は考えにくいものがありました。
では、何があるかと考えたときに、そういえば少し前に、植物を乾燥させたものをいただいたことを思い出しました。
どくだみの葉を乾燥させたものと、ゴーヤのスライスを乾燥させたものとを頂いていたのですが、このどちらかに違いないと思い至りました。
そこでそれらを取り出して調べてみると案の定…
ゴーヤスライスのほうに大発生していました。
ジッパーバッグに入っていたので、本来なら発生しても出てくることはないのですが、どうやら袋がきちんと閉まっていなかったらしく、そこから這い出してきた何匹かが部屋の中を飛び回っていたようです。
本当に油断がなりません。
速攻で廃棄して元を断つことにより事なきを得ましたが、自分が気を付けていてもこうしたちょっとしたすきをついて発生してしまうので、食品企業の方々にとっては本当に頭の痛い問題だと思います。
しかし、虫にしても、私たちに不快な思いをさせようと大発生しているわけではなく、彼らも種の保存のために一生懸命なだけで、反省するべきは無自覚にそのような環境を作ってしまった自分だと考えています。
でも気持ち悪かった
今後は食品の保存にはより一層気を付けようと思った今回の出来事でした。