友人ニックが苦しみから解放されました。

 

前々週まではちゃんと会話ができていたのに、、

でも眠っていることが多くなっていました。

 

私が会いに行くとニコッと静かに微笑み、それからいつもの憎まれ口を叩きます。

 

ニック:なんだよ、久しぶりじゃないか!全然来てくれないな。

 

私:何言ってるのよ。3日前に来たじゃないの。

 

そう会話している間にも目を瞑った途端眠ってしまいました。

買ったものを冷蔵庫にしまったり台所を片付けて、帰りました。

 

すると車の運転中に電話がかかってきて

 

ニック:なんだよ!なんですぐ帰ったんだ!2〜3分しかいなかったじゃないか!

 

私:何言ってるのよ。30分はいたわよ。また明日行くから待っててね。何か食べたいものはある?

 

ニック:そうか、明日きてくれるならオッケーです。うん、サンドウィッチが食べたいから美味いパンとハム、チーズそしてマヨネーズも買ってきてくれ。

 

私:オッケー。じゃあまた明日ね。

 

翌日サンドウィッチの材料を買って行きました。

 

ニック:半分だけ食べたいんだ。作ってくれるか?

 

私:もちろん!ちょっと待ってて。飲み物は何がいい?紅茶?

 

ニック:ビールが飲みたい。

 

私:ギネス黒ビールが冷えてるから、じゃあ持ってくるね。

 

ニック:君の顔を見ると食欲が出てきたよ。

 

と言ってサンドウィッチを頬張りながら、冷えた黒ビールを美味しそうに飲んでいました。

 

私:ニック、娘が声優出演したアニメ映画の試写会が明日ロサンゼルスであるから、明朝早くに家を出るの。でも試写会が終わったら夜中の便ですぐに帰ってくるからね。

 

ニック:絶対にすぐに帰ってきてくれよ。僕はいつまで持つかわからないんだからな。

 

私:何言ってんのよ。そんだけ食欲があれば大丈夫よ。

あっはははははー爆  笑ゲラゲラ

 

ロサンゼルスから戻って数日後、訪問看護師から電話がありました。

 

看護師:ニックが衰退し始めました。昨日から意識が朦朧とし始めています。

 

私:え?先日まで元気だったのに、、

 

すぐに会いに行きました。

 

私:ニック、どう?元気?

 

ニック:あんまりよろしくないよ。死が近づいてると思う。

 

私:何言ってんのよ。ダメダメ、まだよ!旦那と娘があなたに会いたがってるから今日放課後に連れてくるね。

 

ニック:それは楽しみだ。旦那とビールを飲みたいから買ってきてくれよ。

 

 

声を出すのも苦しそうでした。虚な目をしていて、、悲しくなりました。

 

旦那と娘を迎えに行き、学校から真っ直ぐニックに会いに行きました。

娘に会うのは久しぶりなのでとても喜んでくれました。

 

娘が小さかった頃は娘の誕生日会に毎年ニックを招待してましたし、ミュージカルの発表会にはニックは従姉妹たちを連れて観にきてくれました。

お小遣いやぬいぐるみなどを事あるごとにプレゼントしてくれてニックは娘を自分の孫のように可愛がってくれました。祖父母が遠い日本にいる娘にとってニックは祖父的な存在でした。

 

うちの旦那:ニック、乾杯しようぜ!

 

ニックにギネス黒ビールをグラスに入れて持たせて上げました。

うちの旦那は缶ビールをプシュッと開けて、

 

乾杯!シャンパンビール と大きな声を上げ、ニックと交わしました。

 

ニックは力が出ないようで辛そうでしたが、精一杯の誠意を旦那に手向けてくれ、美味しそうにビールを飲んでいました。

 

うちの旦那:ニック、再来週の日曜日はスーパーボールだからビール飲みながら一緒に観ようぜ!

 

ニックは力無く微笑んでいました。

 

その日以来私は毎日ニックに会いに行きました。仕事の後でどんなに疲れていても会いに行きました。

 

ところが、、2月3日に会いに行った時に私の顔がわからなかったようで、、ずっと眠ったままの状態から目を開けた時があったのですが、私を介護士と勘違いしていた様子でした。

 

翌日2月4日は朝から晩までフードトラック営業で忙しく、さすがにニックには会いに行けませんでした。

 

2月5日月曜日は、フードトラック営業の新規の場所に行くことになってましたので朝から大忙しで準備をしていました。すると、アパートの管理事務所から電話がかかってきました。管理事務所のアブでした。

 

アブ:ニックが今朝亡くなったよ。

 

私:本当に!!すぐに行きます。

 

新規のフードトラック営業でしたがお客様に事情を説明し、キャンセルしました。

 

大急ぎで旦那と一緒にニックの家に向かいました。

 

ベッドにはいつも通りの寝顔のニックが横たわっていました。呼んだら目を醒ますのではないかと思うほどでした。

 

安らかに亡くなるというのはこういう状態のことだと思いました。

 

 

こうして、イタリア系アメリカ人男性ニックの86年の生涯が幕を閉じました。

 

おしゃれでインテリで誠実で、それでいてユーモアセンスは抜群で、周りの人々を笑顔に変える達人でした。

若き頃のニック(大学卒業アルバムより)

 

 

2月17日土曜日にお葬式を執行します。

 

生前中にハワイの墓所にお墓を購入していたので、4月に私と旦那と娘でハワイに行き、ニックのお骨を納骨して参ります。

 

 

今は悲しむ間もないほど忙しいです。ニックの主治医の病院スタッフや介護施設でよくして下さった方々、ニックの友人や遠い親戚に連絡したりして招待状を送付したり、お香典返しを選んだり、家の後片付け、身辺整理など、頭の中がいっぱいで眠れない日々が続いています。

 

全てが終わったら、ゆっくりとニックを想、悲しみに浸り、思いっきり泣きたいです。