京野周作 習作集ーー2015年ーー
★友人
予約した中村さんの友人の中村会の会員3です
★休む
突然の雨に散歩を取りやめて木陰で休む蝉の鳴くまで
★君
どうしても僕にはわからぬ ゆくのならひとりで君はなぜゆかぬのか
★許す
六十年 酒を醸した人の手を握る 許せよ手は洗わない
★薬
薬学を志す子に付き添って薬草園で毒を見つける
★犬
寝てばかりゐる老犬が夢にみたブルームーンがそっとよりそう
★日記
一頁一月を書く日記には歩数、カロリー、息子が帰る
★選ぶ
われひとり田舎に帰るはろばろと妻の選んだ土産を提げて
★手
ぐい呑みを作ってくれる母の手は小さく 痩せて 皺深く寄る
★怒る
戦場が安全だとか原発は安心だとか怒らぬ羊
★つかむ
こっぴどい裏切りに耐え人生の卵を掴んでオムレツ作る
★母
たらちねの母から生まれ ひさかたの光のなかへ滅んでいくのだ
★嘘
生きていくために吐いてるいくつかの嘘の自覚はなくなってゐる
★料理
具を何にするかが勝負の”おにぎらず”男の料理と父はうそぶく
★ガラス
はればれと新幹線のガラス窓に映るわたしが口角上げる
★問う
ならば問うわたしがここにいるわけを白鳥に成るたましいあるかと
★におう
ココナッツミルクの匂いのするひとの後ろについて階段のぼる
★雲
白い月 雲に並びて浮かびゐる ゴッホの絵にはまだ早い空
★約束
私が私でゐる約束をまもることからはじめる残生
★何
何かしらたたかっているひとたちのほんのひとときひとかけのチョコ
★私
しあわせはいつもとなりでわらってるわたしのそばのあなたのそばで
★あこがれる
憧れる赤いくちびる マリリンはいたずらな目でボクをみている
★足
ほろ酔いの足もと照らす薄あかり 心配顔でついてくる月
★写真
若かりしゼミナリステンの顔のなか素性の知れぬ女性が写れり