第11話 「何でつぶれないの?」
こんにちは
NBLA講師のホリコンこと堀内智彦です。
大阪府株式会社のバランスシート(平成18年3月31日現在)を再掲すると、
借方(左側) 貸方(右側)
流動資産 740億円:流動負債 2307億円
固定資産 5兆7423億円:固定負債 5兆 179億円
投資等 1兆 257億円:純資産 1兆5940億円
となります。
さて、前回安全性の分析をした結果下記のように民家企業なら危険水域という判定になりました!
流動比率=740億円÷2,307億円=32.4%!
当座比率=25,747百万円÷2,307億円=11.2%!
(当座比率はさらに分子が現預金だけになり小さくなる。)
しかし、どうしてこのように危険な分析数値なのに、「大阪府株式会社」は倒産しないのでしょうか?
その理由は(1)キャッシュフローの問題と(2)流動負債の内容の問題と二点と思われます。それを検証する前に、「支払能力と負債」の関係を解説しますね。
会社を経営されている方は、銀行から資金調達するときに、良く「月商の3か月分が限度!」とか言われたことがありますか?
その意味を筆者的に考えると、恐らく以下のとおりです。
企業が健全な経営を続けているときの収益状況は、経常利益ベースで10%(年商の10%)、税引後で5%程度(法人税等の実効税率を仮に半分とします。)ですよね。ここで、設備投資ではなく、運転資金(仕入や固定費をまかなうために)として銀行から借りるとしたら、返済能力をどうみるか?ですが、健全経営であって、「税引き後利益」を全て返済に回しても、年間の元本返済能力は、年商の5%程度ということになりますね。
ということは、もし年商分(100%)の借入をしたら、返済に「100÷5=20年」掛かるわけです。
もちろんただでは貸してくれませんから、金利を数%負担しなければなりません。ということで、貸す側からいうと、運転資金を5年で返済してもらうには、5%×5年=25%すなわち、「年商×25%=3か月分」が与信限度?ということになるのではないでしょうか?
さらに設備資金の場合は、毎年「減価償却」として、外部に支払が無い費用として、内部留保される(つまり税金がかからず、償却分の現金が残る)ので、返済原資になるということです。
まあ、こういう返済能力をきちんと考えずに、担保価値?だけで重ね貸しするほうにも問題はありますがね。
本論に戻ります。
ということで(1)キャッシュフローの問題は、遡って損益計算書から推定してみます。
「大阪府株式会社の損益計算書(平成18年度、百万円)」
売上高(収入項目) 1,991,859
人にかかるコスト 1,221,833
物にかかるコスト 292,373
移転支出的コスト 790,601
その他のコスト 105,508(行政コスト計2,410,315)
経常利益(差引) △418,456(約4,184億円の赤字!!!)
ということなのですが、この「人にかかるコスト」のうち、407,472百万円が「退職給与引当金繰入」で、「物にかかるコスト」のうち、192,447百万円が「減価償却費」なのです。
「退職給与引当金繰入」は、職員が年度末に自己都合退職をしたと仮定したときの要支給額を100%計上しているようです(発生主義?)ので、実際には支払(現金支出)がありません。
「減価償却費」も他の記事(やさしい経営学)や上記の説明のとおり、「減価償却費」は評価であって実際の支払は済んでいます。つまり、この二つのコスト(費用)は実際には、現金支出を伴わないということのようです。
ということで、キャッシュフロー(資金収支)を筆者的に計算しなおすと、
経常利益(差引) △418,456
減価償却費 +192,447(計上されているが、お金は出て行かない)
退職給与引当金繰入+407,472(同上)
差引(収支) +181,493
つまり、「経常利益は赤字」でも、実際の収支で見ると、手許にキャッシュが残っていることが、即破綻しない?
ひとつの原因と思われます。だからとって赤字はダメです!本来赤字=0ならば、このキャッシュフローは負債(府債)などの償還つまり借金返済に回せるはずなのです。これを繰り返すと、さらに財産が減って、負債が増えるます!
また、減価償却費も将来の公共施設の整備分としてとっておかなければいけません!
しかし、またまた納税者(零細企業事業主)として一言!!!
「退職給与引当金繰入」を期末自己都合の全額(100%)計上できるのは驚きです。民間では、このようなことは税務署が認めません。
かりに計上しても費用としては控除できず、税金を負担しなければ、債務として認識できません。法人税等の負担がない地方公共団体で、100%計上を認めるのは、まさに自己防衛的な「御上意識」といわれても仕方ないのでは?
やはり官僚は賢いのう!