01275 |   夜明け前。

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あまりにも、気持ち良い天気。桜だって開花しちゃうよな、こんな気持ちの良い土曜日だもん、みんなに、見て欲しいって、咲くよな、桜だってさ。堅い、堅い蕾なんかに閉じ篭ってたくない程の良い天気だ。まさに、春。ようやく、春がやってきた。桜も、咲き乱れ始める。そんな季節を感じて僕は歩いてたんだ。どこに行くわけでもなく、ただただ、歩いてた。電車に乗ったり、花見に行く若い軍団に紛れてみたり、カップルの横を、さりげなく歩いてみたりして、さ。そして、君の匂いを、鼻で感じながら、歩いてたんだ。瞼の裏に焼きついた君の笑顔。君の横顔なんかを、想い出したら少しだけ寂しくなってしまって、僕はケイタイデンワを取り出して、誰彼構わず電話をしてみた。よう、元気。って。僕は、元気なんだ。ってね。デンワを切って、何やってんだと少しだけ苦笑いしながら家に戻ったんだ。だって、逢いたい人は、あの人しかいないのだから。逢いたい人は、一人だけ。一人だけなのだから。



三年目の桜を、君と一緒に、見る。だから、それまで僕は桜を見に、行かない。



君と見たいんだ、桜。また、一緒に歩きたいんだ。桜の花びらを、髪の毛に乗っけながら、さ。九段下とか、目黒の庭園とか、さ。御苑とか、あの公園とかも。君と歩きたいんだ、僕は。



最初に、君と、見るって決めた桜は、きっと来週見れるような気がする。来週、君と。二人で。