01123
それ、一個、頂戴。
と、思わず手を出して、声かけたのは僕です。水曜日の朝の満員電車で、隣に座った女子高校生が食べようとしている葡萄味のキャンディー。匂いで、わかったんだ、葡萄味だって、葡萄味のキャンディー、食べたくなっちゃう位に、甘い、甘い匂いが漂ったんだ。
どうぞ、と、おっかなびっくりの顔をしたその子は、笑ったらきっと可愛いだろうなって、そう想って、思わず僕は、自分のポケットからみかん味のキャンディーを、彼女の手に渡した。すると、彼女は、物々交換ですね。と、笑顔で言って渋谷で降りていった。ありがとう。と、僕は手をあげて、押し出される彼女を見送った。小さく、彼女は頷いて電車から押し出されたら、扉が閉まったんだ。その、キャンディーが、今ここに。僕の口の中に入ろうとしている。きっと、今授業中であろう彼女も、みかん味のキャンディーを今、食べようとしているんじゃないかなって、そう想うんだ。サンタクロースじゃないけれど、素敵なプレゼント。僕にも、彼女にも、たった、一粒のキャンディーで、こんなに幸せな気持ちになったんだ。
空は、こんなに青いのに、風は物凄く冷たいけれど、僕は、今日も、元気です。
