かつての打高投低がいまは逆転して
打率急落、ホームラン激減の原因は
私がデイリースポーツのプロ野球記者(阪神タイガース担当)になり、仕事としてプロ野球の試合を観るようになったのは1980年(昭和55年)のこと。
その年のセパ12球団の成績を振り返ってみる。
セ・リーグの平均チーム打率は.260、パ・リーグは.273。この年、パ・リーグを制覇した近鉄バファローズのチーム打率はなんと.290に及んだ。
その傾向は個人打撃成績にも表れていて、セの首位打者、谷沢健一(中日)の打率は.369、本塁打王の山本浩二(広島)は44本。
パの首位打者、リー(ロッテ)の打率は.358、本塁打王のマニエル(近鉄)は48本。チームの平均本塁打数もセが142本、パが199本。ちなみに昨年のチーム平均本塁打数はセが107本、パが101本である。
この格差は、投手、打者の技術の相関関係や打者の技量だけに起因するものではない。ひとつは当時の球場の狭さ。それなりの広さを誇る甲子園にも外野フェンスの前に金網で仕切られたラッキーゾーンが設けられていた時代だ。
規格ぎりぎりの反発係数を与えられた「飛ぶボール」の存在もまことしやかに語られた。点を取り合うことが野球の醍醐味であるというポリシーがわかりやすく追求されていた頃だと思う。
この年、1試合あたりのチームの平均得点はセが4.06点、パが5.06点。昨年のセ3.51点、パ3.45点と比べれば、相手に勝つために取らなければならない得点が1点以上違うことがわかる。
野球というゲームの性質上、打撃成績を打者の立場からだけで見ることはできない。むしろ勝負の主導権を握るのは投手の方で、その成績はどう変遷しているのか。
基準として1980年の数字を拾うと、セのチーム防御率トップの巨人で2.95、最下位の駐日は4.43。最優秀防御率は松岡弘(ヤクルト)の2.35だ。
一方のパ・リーグはトップの日本ハムでさえ3.61。最下位の南海になると5.63にまで落ちてしまう。個人では新人ながら22勝を挙げ、投手タイトルを総なめした木田勇(日本ハム)の2.28がトップだった。
今年の前半戦の成績(7月4日時点)と比較すると、セのチーム防御率トップは広島で2.05、最下位のヤクルトでさえ3.27にとどまる。パはトップがソフトバンクで2.23、最下位は楽天で3.63。1980年の個人防御率トップの数字が、そのままチームの防御率に当てはまっているような状態だ。