意地でも言わない「そうですね」

聞き手泣かせの「アレトーク」満開

 

 6月28日付、デイリースポーツ朝刊を開いて、思わず吹き出しそうになった。

 1面は阪神タイガース、久々の快勝と同時に、この白星が岡田監督にとっての700勝目であったことが大きく報じられている。

 

 試合後、球団が用意した記念のボードをスタンドのファンに掲げて見せる岡田監督の笑顔…なのだが、ページを開いて2面、定番の岡田監督のインタビュー録「アレトーク」を読むと少し雲行きが怪しい。

 

 まずは試合後のサンテレビのインタビューに答えている。

 ―近本がスタメンを外れた。

 「昨日もあまり内容よくなかったからね。今日1日休ませようかと思って」

 

 ここからがカメラが外れ、トラ番記者とのいわゆる「囲み」トーク。

 ―近本は明日スタメンに戻すのか。

 「いや、そんなん分からへんよ(後略)」

 ―前川は昨日、悔いが残るところもあった。

 「どういうこと?悔しいって?」

 ―「罰金や」と(監督が)言っていた。

 「あんなんで罰金取ってたら、今年なんぼ罰金取らなあかんか分からん。何を言う   てんの。(後略)」

 ―佐藤輝は走塁ミスもあったが、バットで取り返した。

 「バットでって、それ普通じゃないの?(後略)」

 ―村上は0-0の展開でもいい投球だった。

 「だから言うてるやん。去年のいい時の姿に戻ってるよ、はっきり言うて(後略)」

 

 インタビュー録のスタイルなのでそのままでも新聞記事になっているが、このコメントを取り込んで記事を構成するとなるとなかなかむずかしい。予定調和を求めて質問を繰り出す記者の苦労が行間に滲んでいるやりとりだ。

 

 スポーツ紙でもテレビでも、このところのインタビューの定番スタイルは、質問者が質問というよりはあらすじを語り、監督、選手は判で押したように「そうですね」で話を始める。面白いかどうかは別にして、このスタイルがすっかり定着してしまった。

 

 ところが岡田監督は、試合後のインタビューに限らず、日常の取材、あるいはプライベートの会話でも、相手の話を受けての「そうですね」から話を始めることは絶対にない。

 

 この「アレトーク」は、型破りの生々しいやりとりが伝わることもあって、デイリースポーツでも人気のコーナーで、岡田監督独特の返事「お~ん」もここからファンに定着していった。

 

 今年の開幕前、去年のような独走のペナントレースはありえない、ということは何度も口にしていた岡田監督だが、打てず守れずの一進一退の展開に、ここまで何度か「何もないわ」と取材を拒否してきた日もあった。

 

 久しぶりの快勝、自身の700勝。しかしご機嫌な様子は微塵もうかがえない「アレトーク」。何が心に引っ掛かっているのか。

いやいや、これでこその正調岡田節、どこかで感じた手応えの証し、かもしれない。