岡山県営球場での前代未聞のハプニング

原因は神の使い、白蛇によるショート

 

6月25日、倉敷マスカット球場での阪神×中日戦

 

 岡山県倉敷市に住むタイガースファンの友人夫婦が、6月25日に自宅近くの倉敷マスカット球場で開催された阪神vs.中日戦観戦の際の写真を送ってきてくれた。

 

 このブログを読んでおられる方なら、「爪のトラ姫」こと友人婦人のネイル写真は記憶にあるかもしれない。自らデザインする凝りに凝ったタイガースネイルを写真付きで紹介したことがある。

 

 今回は超満員の倉敷マスカット球場の様子とともに、この日のために新調したネイルの写真も添えられていた。ちなみに彼女は熱狂的な梅野捕手のファン。ネイルに書き込まれた「2」は言うまでもない「梅ちゃん」の背番号だ。

 

虎ネイルの最新作

 

 倉敷マスカット球場が完成したのは1995年。3万人を収容するプロ野球レベルの球場で、倉敷出身の星野監督時代にはチームの秋季キャンプをこの球場で行っていたこともある。

 

 ちなみにそれ以前、岡山でのタイガース戦が毎年のように開催されていたのは、岡山市内にある岡山県営球場(現岡山県野球場)だった。収容はわずか1万3千人。プロ野球の人気チームの公式戦を開催するには物足りない施設だった。

 

 デイリースポーツのトラ番記者として毎年岡山県営球場でのナイター取材に足を運んでいた40年以上の昔、いまも忘れられない前代未聞の大事件が発生した。

 

3万人を超える観衆が詰めかけた

 

 正確にいうと1982年7月8日の阪神vs.広島戦での出来事だった。当時。岡山県営球場の記者席はバックネット裏のスタンド最上段に設けられていて、木製の屋根と壁に囲まれた小さなスペースだった。前方はグランドが見渡せるように開いていて窓ガラスなどない。夏は蛍光灯の灯りを求めて虫が飛び込んで来た。

 

 その虫を手で払いのけながら、スコアブックに試合の経過を書き込んでいた。阪神の攻撃で打者は外野手の佐野仙好、広島の投手は阪神OBでもある古沢憲司。古沢が佐野に向かってボールを投げ込もうと、ちょうど投球動作に入り、腕を振り下ろそうとしたその瞬間、突然球場中の灯りが消えて、真っ暗闇に包まれたのだ。スタンドは「うわーっ」とわけのわからないどよめきに包まれた。

 

この状況が真っ暗闇に一変したら…

 

 試合再開までどれぐらい時間を要しただろうか。その前に暗闇に目が慣れるのを数分待ち、スタンドを下ってベンチ裏に取材に向かった。

 

 まずは打席に立っていた佐野。古沢の投球がいまにも放たれようとしたタイミングだったので、真っ暗闇で瞬時に感じたのは命の危険だったという。ボールがどこに飛んで来るかもわからないし、もちろん目で追うこともできない。本能的に佐野がとった行動は、打席の中で地面にしゃがみこむことだった。

 

 しかし実際には古沢の投球が佐野に向かうことはなかった。古沢の話。「佐野もキャッチャーも何も見えないのに普通に投げたら大ケガをさせると思った。しかし投球動作が始まっていてもう止められないタイミングだった。どうしたか?地面に向かってボールをたたきつけたよ」

 こうして灯りが戻るとともに試合は無事再開されたのだった。

 

 このときの停電の原因は球場内の高圧線にヘビが巻き付き、電流をショートさせたためだったと後になって分かる。しかも当時の阪神監督、安藤統男にはそのヘビが珍しい白ヘビであったという情報も伝えられた。

 

 翌日、縁起物として知られる白ヘビの魂を弔うため、安藤は関係者に依頼してその現場に出向き、手を合わせている。

 

 今は昔。それでも岡山でのナイターの時期になると、あたりが突然の闇に包まれたあの瞬間のなんともいえない恐怖感を体が思い出す。