「風の奏の君へ」と「晴れの国」が話題に

「男はつらいよ」の高梁ロケは53年前のこと

 

53年前の「男はつらいよ」のロケ現場

 

 6月7日に全国で封切られた松下奈緒主演の「風の奏の君へ」は全編岡山ロケで撮影されている。原案はあさのあつこの小説「透き通った風が吹いて」。監督脚本は大谷健太郎。この二人は岡山県北西部の美作市中心地にある県立林野高校の卒業生で、彼らの母校もロケの舞台となった。

 

 6月初めに大阪で開催された「近畿おかやま会・県人会・同窓会連携強化委員会」の席上、林野高校同窓会の代表者からこの映画のことが紹介されると、それまで高齢化、若者離れといった難題ばかりで、やや重苦しいムードだった会の雰囲気が一変した。

 

 続いたのが高梁市。「晴れの国」という高梁舞台の映画の公開が始まったと紹介された。監督は岡山市出身の大森青児。大森監督は8年前にも高梁を舞台にした作品「家族の日」を撮っている。「晴れの国」はのロケはすべて高梁市で行われた。6月1日には岡山市内の映画館で先行上映がスタート。2日には舞台の高梁市で特別上映が行われ、監督、俳優らがステージに立って舞台挨拶を行った。

 

 会合の出席者の中には、すでに映画館で鑑賞を済ませてきた人もいて、突然登場した2本の映画の話で、会議は一気ににぎわった。

 

 美作市にしろ、高梁市にしろ、県の山間部にある小さな町。人口は高梁市が2万6千人、美作市が2万4千人ほどで、どちらも全国の地方都市同様、人口減、高齢化という深刻な課題に直面している。

 

 ともすれば暗い話に偏りがちなところへ、同時期に降って湧いたような2本の映画の封切りとは。少しでも故郷のにぎわいの手助けになれば、というのが会議の出席者に共通した思いだったに違いない。

 

半世紀前と変わらぬ高梁市の町中の様子

 

 高校時代の3年間を高梁市で過ごした私にとって、映画といえば忘れられない思い出がある。高校1年生だった1971年のこと。当時日本映画を代表する人気シリーズだった渥美清扮するフーテンの寅の人情喜劇「男はつらいよ」のロケが町のあちこちで行われたのだ。

 

物語の舞台となった古い邸宅

 

 作品はシリーズ第8作としてその年の12月に公開された「男はつらいよ 寅次郎恋歌」。マドンナ役は池内淳子だった。現在も高梁の町は、半世紀以上も前の撮影当時の面影をそこかしこに残している。