総合運動公園、学園都市を通り抜けて

最後のひと山を超えればようやくわが家が

 

4万5千人収容の大スタジアム

 

 かかりつけの歯科医院から自宅まで、衝動的に歩き出したおよそ15㌔の山・街ウォーキングも半ばを過ぎた。

ニュータウンの家並みがいったん途切れると、その先には、大規模なスポーツ施設が集まった「総合運動公園」というエリアが姿を現した。

 

かつてイチローの本拠だった球場

 

 イチローがいた当時のプロ野球、オリックス・ブルーウェーブの本拠地だったグリーンスタジアム神戸(現在はほっともっとフィールド神戸=35000人収容)、つい先日開催された世界パラ陸上選手権の会場となった神戸ユニバー記念競技場(45000人収容)、屋内競技用のグリーンアリーナ神戸(4852人収容)とこれだけの規模の施設が集積した地域は全国でも珍しい。

 

信号なし、ストレスなしの歩道が延々と

 

 総合運動公園からは、片側三車線の車道とは少し距離を置きながら、並行して並木道風の歩道が延びる。歩道にはほとんど信号はなく、歩行者、ジョガーにとってはノンストレスでウォーキング、ジョギングを楽しめる。

 

 次に現れるのは学園都市。大学、専門学校、高校、小中学校など、10を超える教育機関が集積。一方では静かな住宅地が広がるエリアでもある。

このあたりに差しかかると、スタートからの時間も1時間半を超え、全行程の3分の2を踏破したことになる。

 

最後のひと山、車はトンネルだが…

 

 ただし最後に用意された胸突き八丁を思うと、ひと安心という気にはなれない。視線の先、横に広がる山の連なり。地下鉄や幹線の車道はトンネルで山の下を潜り抜けていくが、歩いてゴールするには、山を登って下り、越えていくしかないのだ。

 

 ここでいったん新興住宅地は途切れ、古くからの田園風景の中を道路は走る。その道路に沿って歩き、トンネルの横で石段を登ってトンネルの上に上がり、歩行者用の小さなトンネルを抜けて山上のエリアに到達する。

 

突然現れる農村エリアの風景

 

 そこは農家が集まったこぢんまりとした集落で、露地栽培の野菜畑や、ビニールハウスが並ぶ中、車道の端を歩いていくと、ようやく自宅のある「西神南ニュータウン」が見えてくる。

 

信号待ちの間に、スマホを取り出してまずは時間を確認した。板宿を出発したのが9時20分。デジタル表示は11時50分を示していた。次に歩数計をチェックする。21000歩に達していた。歩く速さは、平均すると6.2~3㌔/時ほどか。やはり15㌔近くを歩いたことになる。

 

2時間半後にようやく自宅へ

 

 ほんの思いつきの一歩から始まった山ブラ、街ブラは想像を超える大ウォーキングになった。それでも沿道に広がる暮らしの様子、都市計画の成果などを目にしながら歩く時間は退屈でも苦しくもなく、むしろアッという間だった感覚の方が強い。

 

 スタートは歯科医院を出てからの第一歩を右に踏み出すか、左に向けるかの選択から。クセになりそうな右への一歩だった。