地下鉄なら15分の道のりを敢えて…

六甲山系の山の合い間を目指して一歩

 

スタートの神戸市営地下鉄板宿駅近く

 

 所は問わず、歩くことが好きである。山歩きはもちろんだが、街歩きもまた楽しい。

このブログの「1時間半の悪戦苦闘、奥歯が抜けて残ったものは」編に書いた行きつけの歯科医院に抜歯の術後の経過観察、養生のために通う機会が増えて、診察が終わり、玄関を出るといつも次の一歩を左に踏み出すか、右にするか迷ってしまう。

 

 歯科医院があるのは、新神戸駅から三宮駅を経由し、神戸市西部の西神中央駅までを結ぶ神戸市営地下鉄山手線板宿駅(神戸市須磨区)のそば。自宅があるのはさらに西の西神南駅(神戸市西区)で、板宿駅までは6駅、路線図によると11.3㌔の距離がある。歩くとなると15㌔足らずの距離になるに違いない。

 

 普通なら西神南駅から15分ばかり地下鉄に乗って板宿駅へ。帰りはその逆のコースを地下鉄で戻って来る。歯科医院から板宿駅まではわずか2分の距離で、公共の交通手段で他に選択肢はないといってよく、考えることなど何もない。

 

広い歩道が整備されていて見違えるほど

 

 ところが歯科医院の玄関を出て、青く澄んだ空を見上げ、さわやかな風を感じるとにわかに考えこんでしまうのだ。右に向かって歩き出すと、一体どうなるのだろうか。初めてのときはそんな好奇心もあった。

 

 地形的に、神戸市は中央部分を六甲山系が東西に走っているため、南北の交通の便はあまりよくない。山を越えるか、トンネルを掘るか、山間を縫うか、いずれかの手段をもって六甲山系南側の都市部と北側の住宅地をつないでいる。

 

と思ったら歩道がなくなり山道モードに

 

 板宿の歯科医院を出て道を右に取ると、まさにその南北を結ぶ幹線のひとつ県道22号線に沿って六甲山系を抜けることになる。山間を縫うので傾斜はそれほどでもないが、道は曲がりくねっていく上に細く、かつては日常的に渋滞が発生していた。

 

 時間に縛られるわけでもないし、風の向くまま、気の向くままに、となんのあてもなく一歩目を右に向けて踏み出した。

 

この辺りの地名は「乗越」、さもありなん

 

 12世紀末には源氏の先陣として、源義経が六甲山系の急峻な坂道を馬で駆け下り、平家の背後から不意を突いたと言われる「逆落とし」で有名な鵯越(ひよどりごえ)もすぐ東側にある。途中、弓矢の名手、那須与一の墓所である寺なども目に入る。

 

 まず驚かされたのは、道路の改良が随分進んでいて、広い歩道が確保され、道路自体も大幅に拡幅されていることだった。少し先に進むと、途端に道幅が狭くなり、歩道がなくなって怖い思いをする場所も現れるが、あちこちで工事が進められており、遠くない将来ルート全体が見違えるような様子に生まれ変わることになるのだろう。

 

眼前に六甲山系裏側の団地が見えてきた

 

 歩き始めて20分余りで、地下鉄で自宅に向かった場合の一つ目の「妙法寺駅」を示す道路標識のところまで来た。