PH1.2の洗礼は思わぬ所に

ヒバ材の醸す癒しの雰囲気

 

湯治場ムードの漂う玉川温泉

 

 昨年五月に玉川温泉、玉川毒水について電話で話したことを覚えていてくれたのか、年明けにその友人から「玉川温泉に入りに来ませんか」という誘いがあった。

 

 もちろんふたつ返事でその誘いに乗り、実現したのがこの五月の旅だった。たまたま玉川温泉に立ち寄った日から、ちょうど一年が経っていた。

 

 玉川温泉には、隣り合わせに同じ源泉を利用した玉川温泉と新玉川温泉というふたつの宿泊施設があり、前者は湯治場さながらの自炊設備なども備えた旅館。後者は「山岳リゾート」を謳うホテル風だ。

 

 友人が予約してくれたのは後者の方だった。前者にあって後者にないのは有名な天然岩盤浴、逆に後者には前者にない露天風呂がある。

 

 源泉は同じ、その他の入浴施設もほぼ同様ということで、その選択に従うことにした。どちらに泊まっても互いに日帰り入浴という形で行き来すれば、どちらの風情も楽しむことができる。

 

 車をまずは新玉川温泉の方に向け、ホテルの部屋に荷物を置くとすぐに車で3分ほどの場所にある玉川温泉に向かった。他にシャトルバスという手段もあるし、歩いて行き来することもできる。新玉川温泉のフロントでは、宿泊客用に玉川温泉の無料日帰り入浴券を手渡してくれた。

 

 途中の道路脇に、「玉川温泉の水を魚の住める水にしています」と書かれた大きな看板が立っていた。急峻な斜面の下方を指す矢印があって、そこに玉川温泉の酸性水を中和処理する施設があることが示されている。

 

 玉川温泉に着くと、すでに日帰り入浴客の締め切り時間、午後3時を過ぎていたが、新玉川温泉の宿泊客はその対象外です、と施設内に案内してくれた。

 

床にまでヒバ材が張られた癒しの大浴場

 

 昭和9年(1934年)に玉川温泉という名称が使われるまで、この温泉は「鹿湯(しかゆ)」と呼ばれていた。手負いの鹿が体を浸したところ、その傷が治ったという言い伝えに由来する。ところがほど近い青森県には「酸ヶ湯(すかゆ)」というこちらも高い効能で鳴らす古湯があり、東北弁で発音すると「「しかゆ」と「すかゆ」の区別がつきにくいという利用で玉川温泉に名前を変えたのだそうだ。

 

 広大な浴場は、酸ヶ湯温泉と同じ青森ヒバで造られている。耐酸性力が高いことがその理由だ。天井から壁、床にまで敷かれた板材の作り出す穏やかな空間は、体だけでなく心まで癒してくれる。

 

源泉100%の湯を湛える大浴槽

 

 まずは源泉100%の大浴槽へ。強酸性泉の刺激が強いため、1回につき2~3分程度の入浴を目安にと注意書きがある。浸かってみると、湯温はあえてぬるめに設定されていて、入りやすい。

 

 湯に浸した指先をなめてみた。強い酸っぱさと苦さが伝わって来る。玉川温泉源泉のPH1.2を食酢の2.8前後と比べるとその酸性度の強烈さがよくわかる。

 

個別に蒸気浴ができる設備もある

 

 アゴの先を浸してみると、朝のひげ剃りあとに軽くピリピリと湯が沁みるのがわかる。そんなことをしているうちに、“下半身”に思わぬアラームが発生した。尿道口から奥に入ったあたりの粘膜がズキズキと痛み始めたのだ。湯が内部に沁みこんだせいだろうか。これをタイムアップのサインとして、ひとまず湯から上がった。