「ミチのムコウ」の里山活動

田んぼ6枚、収穫は9月初旬

 


    

ミーティングで基本知識を学ぶ

水が張られたこの日の舞台

 

 このブログでも、これまで「酒造りもまた楽し…飲むだけでは飽き足らず」、「今年の酒米づくりが『畔塗り』」でスタート」で二度紹介してきた兵庫県丹波篠山市を拠点とした里山プロジェクト「ミチのムコウ」のメーンイベント「100人で育む名前はまだない日本酒」の田植えが5月9日から12日にかけて行われた。

 

 この日本酒づくりは、参加費3万円で100人を募り、酒米五百万石を育てるための田んぼづくりから田植え、草刈り、稲刈り…といった一連の農作業を経て収穫した酒米を、地元の酒蔵「狩場一酒造」に預けて日本酒に仕上げるという企画。出来上がった日本酒のネーミングは参加者から公募して決め、蔵出し後は全員に4合瓶6本が贈られる。

 

 その流れの中でも一番の大仕事と言えるのが、ぬかるみにヒザまで浸かりながらの田植え作業だ。満々と水が張られた田んぼは合わせて6枚。この田植えをすべて参加者の人力だけで行う。5月9日の午前の部の参加者はスタッフを合わせて20人ほどだったが、一般参加者の7割は生まれて初めての田植え体験のようだった。

 

 

 

 

初体験の参加者も多く戦々恐々

植え方の基本をレクチャー

 

 全員が横一列に並んで、横に渡された細い紐の赤い印を頼りにぬかるみに苗を差し込みながら後退していく。水面から泥までが5~10㌢ほど。その泥に指の第一関節をメドに苗を植えていくのだが、水深の深い場所になると植えた苗の先が水面まで届かず、次の苗をどこに植えればよいかの目印がなくなってしまう。

 

 後になって眺めてみると、列が斜めになっていたり、横の並びが乱れていたり、素人仕事丸出しの光景だが、それでも1週間もすれば苗はぬかるみに根を張り、ちゃんと株を増やして夏の終わりには実りを届けてくれるのだ。

 

ぬかるみに足を取られて転倒する人も続出

 

 この日苗を植えた田んぼ一枚から、収穫できる酒米は脱穀した状態でわずか150㌔ほどだという。30㌔の俵にして5袋分。そこまでにかかる時間と労力を考えると、農業の大変さというのが身に沁みてわかる。

 

 今年も稲にとっての天敵のひとつでもあるカメムシが異常発生しそうだという。2年前にも、稲刈りしたばかりの稲穂の、カメムシに汁を吸われて枯れてしまった粒の余りの多さに悄然とした。

 

 それでもこのプロジェクトは薬品、肥料の類を使うことはない。カメムシに対抗する手段は?とリーダーの吉良佳晃さんに尋ねると、「カメムシが針を刺そうとしても通らないような稲をしっかり育てていくんです」という。年に何度かのイベント作業に顔を出すだけの私たちには見えないところで、スタッフのメンテナンスは毎日続けられているのだ。