品揃えは常時全国の60銘柄

英語解説で外国人にも人気

 

広島新天地の日本酒バー「FLAT」のシックな店内

 

 4月末から5月初めにかけての広島~備中高梁めぐり2日目の夜、昼間のゴルフで世話になった知人を夜の部に誘った。「うまい日本酒を飲もう。店はこちらで探しておくから」と声をかけ、経験と頭の中のアンテナをフル回転させてネットで店を探した。

 

 これはいつものパターン。積み重ねてきた経験による嗅覚は捨てたものではない。まったくゼロからのスタートでも9割方は「当たり」を引き当てられる。

 

 デイリースポーツ時代、広島カープの担当として広島に転勤になり、2年間を過ごした。ちょうど30歳になった頃で、夜になると毎日のように酒と麻雀に時間を費やした時代だ。

 

 当時、なじみの店があったせいで、新天地という盛り場が一番の定番だった。40年近く前のことが懐かしくなって、その日の検索キーワードは「新天地」と「日本酒」にした。当然ながらぞろぞろと出て来る候補の中から、「FLAT sake bar」という小ぢんまりした店に白羽の矢を立てた。決め手は日本酒の銘柄の質量と、写真に写った店内のシックな雰囲気、小皿の料理にもこだわりが感じられた点だった。

 

 知人とは近くで落ち合い、小さなビルの2階へ。ドアを開け、予約の名前を告げると「奥のテーブル席、カウンターどちらでも」と言われ、カウンターを選んだ。両方合わせて20席ほどあるだろうか。勧められた席に座ると、隣には観光客と思しき若い欧米人のカップルが、奥のテーブルにもやはり同様のふたり連れのカップルが座っていた。

日替わりのおまかせ3種セット

右から龍神(群馬)、月山「智則」(島根)、上喜元(山形)

 

 日本酒のメニューを開くと60種類を超える銘柄が並んでいる。眺めていても目がくらむだけなので、ひとまず店主お任せの3銘柄のひとくちセットを頼んでみた。運ばれてきたのは山形の「上喜元特別純米」、群馬の「龍神純米吟醸生詰」、島根の「月山純米吟醸『智則』」。「智則」という変わったネーミングについて尋ねると、この酒を造った杜氏の名前で、限定の品だという。

 

つまみ5点盛り

 

     

左は旭鳳「泰平」(広島)、右は「彩來(SARA)」(埼玉)

 

 結局この夜は地元広島の「旭鳳純米吟醸『泰平』」、埼玉の「彩來(SARA)」といういずれも初めて口にする銘柄を楽しんだ。

 

 横に並んだ外国人カップルには別のお任せセットが用意されていた。3銘柄ともラベルにローマ字で酒の名が印刷されたデザインのもの。店主が流ちょうな英語で、その名前の意味、味わいの特徴、合わせるのに適した料理などを説明している。

 

 なるほど。彼らが頼りにするネットの情報源には「英語を話せるマスターが、とても親切にもてなしてくれる店」との情報が書き添えられているに違いない。

 

 料理にも工夫が凝らされ、使われる器、酒を供するワイングラスにも細かな気が配られている。というわけで、ゼロからのお店選びは今回も大当たり。定番店がまた増えた。