初めまして→5月末で閉店

名残り惜しみつつ堪能する

 

古びた大衆店だが味はピカイチ

 

 4月末から5月初めにかけて、知人からの声かけがあって広島へ行き、帰りに母校の高校がある備中高梁に足を延ばしてから神戸に帰ってきた。

 

 ついでができたので、広島で教育関係の仕事をしている友人を、久しぶりに会わないかとこちらから誘った。広島駅から電車で東へ10分足らずの海田市という駅が彼の職住の拠点。以前から「抜群にうまい店がある」と誘われ続けていた海田市駅前の焼肉「海田苑」を所望した。

 

 直前のメールで注意喚起が一点。「古い店だし煙もうもう。臭いがついても構わない格好に着替えてから来るように」という。

 

 本題の方の知人との面会を終えてからいったんホテルに入り、ジャケットとワイシャツをTシャツとジーンズに着替えて広島駅から電車に乗った。

 

 折りしもこの日からマツダスタジアムで広島vs.阪神の3連戦が予定されていた。あいにくの雨で初戦は中止となったため、駅には手持ち無沙汰の応援コスチューム組があふれ返っていた。

 

 お店が開く5時半に合わせて海田市駅待ち合わせは5時20分。駅から店までは3分ほどの距離だった。到着してみると古めかしい昔ながらの大衆焼肉店だが、友人によると「とにかくここの焼肉のタレは絶品だから」という。

 

   

細かく手をかけたイカの塩焼き(左)、定番のロースとカルビ

 

 注文は友人任せ。どうやら彼の定番らしいメニューを「人数分」とスラスラ頼んでくれた。「イカの塩焼き」「ロース」「カルビ」「ホルモン」「キムチ」。最後にビールのジョッキを片手に「僕だけごはんも。最初にね」とうれしそうに言う。

 

 口をはさんで「せっかく広島に来たんだから、コウネも食べさせて」とせがんだ。コウネとは牛の両前足の間にある部位の肉で、人間に当てはめれば肩の前側の部分になるのか。とにかくこれが置いてなければもぐり扱いをされる広島焼肉店の大定番だ。

 

 ここで目に入ったのだが、店のあちこちに真新しい貼り紙がされている。「おい」。気がついていない友人に声をかけた。「えーっ!!」誰より驚いたのがその友人だった。なんと「5月いっぱいで閉店します」と書かれているではないか。「よく流行っている店なのに…。なんでまた」と呆然としている。

 

ボリューム、舌触り抜群のホルモン

 

 「きょう来られてよかったわ」と言いながら、次々に運ばれて来る注文の品をよくよく噛みしめた。どれも新鮮でボリュームもタップリ。そしてイチ押しの少し甘めのタレが確かにおいしい。

 

 そんな中で一番気に入ったのはホルモン。その柔らかながらしっかりした歯応えは鮮度の証し。最初で最後としてしまうには、なんとも名残り惜しい味だった。