WEリーグの現状と挑戦

優勝争いはいよいよ佳境に

 

この日の観衆は久々の2000人超えだったが…

 

 4月14日、ノエビアスタジアム神戸で行われた女子プロサッカーのWEリーグ、INAC神戸と日テレ・東京の試合を観戦した。その時点で今季無敗の神戸は試合数の関係で浦和に次ぐ2位、日テレは4位という優勝争いにも影響してくる一戦だった。

 このところ、観客2000人を超えることが少ない神戸だったが、この日は開幕戦の3106人に次ぐ2380人を動員した。この試合を終えて神戸の今季の観客動員は、1試合平均で1846人。同じスタジアムを本拠とするJリーグのヴィッセル神戸が平均21400人だから、10分の1にも満たない数字だ。

 INAC神戸の1試合平均の動員数はWEリーグ12チーム中5番目にあたる。トップのサンフレッチェ広島は2202人、最下位のジェフ千葉は801人。2011年、なでしこジャパンのワールドカップ(W杯)初優勝で、一気に湧きたった女子サッカー人気だが、13年が経っての現状は厳しい。

 2021年にスタートしたWEリーグ12チームの分布を示した日本地図がある。半分の6チームは関東(東京、千葉、神奈川各1、埼玉3)、2チームは関西(大阪、神戸)、残る4チームは仙台、新潟、長野、広島に拠点を置く。北海道、九州、四国、大きな人口を抱える中京地区にはチームがなく、全国区を謳うにはまだまだ物足りない状況だ。

 

会場で配られたパンフにはWEリーグ高田チェアの対談が

 

 その日、会場では入場者にWEリーグをPRするA3二つ折り、4ページのパンフレットが配られた。中の見開き面を使って掲載されているのが、新しくリーグのメーンスポンサーになった「クラシエ」の岩倉昌弘社長と、WEリーグのトップに立つ高田春奈チェアの対談記事だ。

 高田チェアはジャパネットたかたの創業者、高田明氏の長女。ジャパネットグループで経営の一端を担ってきた経歴も持つ。

 その対談で語られる彼女のスタンスに触れると、現在の女子サッカーの苦境は十分に承知したうえで、目先の人気を追うよりも、サッカーに興味を持つ少女たちがトップのリーグに進むことを志すような環境づくりに重きをおいているように見える。

 私がサンテレビにいた頃、ジャパネットの創立30周年記念のセレモニーが横浜港に浮かぶ巨大クルーズ船の中で行われ、招かれて出席したことがある。そのとき割り当てられたテーブルのホスト役を務めていたのが高田春奈さんだった。

 短い時間だったが、真面目でいて気さく、女性らしさとエネルギッシュさが同居する才人であることがすぐにわかった。パンフレットの対談の中で、彼女は「本当に大変な仕事だぞ、とまわりから散々言われましたが、私、課題が大きい方が燃えるタイプなようで…」と相手を笑わせている。

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 4月14日の試合は、両チームとも決定的なチャンスが何度かあったが、どちらもものにできず、0-0の引き分けに終わった。WEリーグは5月末の最終節までシーズンは残り3分の1となった。皇后杯優勝のINAC神戸は、リーグ戦も制しての2冠を狙う。