丹波篠山の「ミチのムコウ」

あとは田植えをまつばかり

 

苦労しながら畔塗りを終えた参加者のみなさん

 

 兵庫県丹波篠山市を拠点にした里山プロジェクト「ミチのムコウ」の3年目の酒米づくり(五百万石)がスタートした。私自身の参加も同じく3年目ということになる。

 4月13日(土)に作業が行われたのは「畔塗り」というステップで、田んぼに水が張られ、泥のような状態になった土を鋤簾(じょれん)、鍬(くわ)を使って田んぼの周囲に塗り付けていく。それによって田んぼに張られた水が、外に滲みだしにくくするのが目的だ。

 ただ、スタッフによる水面下の準備は稲刈りが終わった後の昨年冬から始まっている。まず稲を刈り取った後に残った切り株を、土壌の栄養分にするためトラクターを使って土にすき込んでいく。

 今年の3月には「隅掘り」という作業が行われた。畔の基礎となる形を整えるため、田んぼの四周の内側をスコップを使って掘っていく。4月に入ると、辺り一帯の田んぼを潤す水を導くための水路の整備が地区の共同作業として行われた。水路の総延長は約5㌔にも及ぶ。それに沿って並ぶ田んぼに上流から順に水が引かれていくことになる。

 この日の畔塗りの1週間足らず前から、もう一度トラクターで土をすき返した上で水を引き、その状態で1日寝かせて水と土をなじませる。その後で行われるのがこの日の畔塗りという段取りだ。

 

田んぼの縁を泥で塗り固めていく

 

 畔塗り自体は、どろどろになっている田んぼの土を道具を使って田んぼの縁に盛り、これも同じ道具で左官職人が壁を塗り上げるように形を整えていく。泥の粘度は一定ではないため、水気が少ないと滑らかに整形できないし、逆に水気が多過ぎると作ったそばから泥が流れて形が崩れてしまう。

 加えて使う道具が鋤簾も鍬も元々は土や砂を手元に引き寄せるようにして使うものなので、築き上げた畔の表面を均して整えるのに適しているわけではない。初めての作業に四苦八苦しながら、午前の部の参加者全員で3面あるうちの2面の田んぼに畔を作り終えた。

 

畔塗りを終え、5月の田植えを待つばかりの田んぼ

 

 実はいまは畔塗り作業のための機械も整っていて、普通の農家ならここまで人手をかけて塗り上げるようなことはない。しかし、参加した子供から大人まで、ワイワイと汗を流しながら慣れない作業を楽しんでいる様子を見ていると、半年がかりの酒米づくりのスタートをこういう形で切ることの楽しさ、意味が存分に感じられる。

 今回の畔塗り作業は酒米プロジェクトの参加者を対象に案内のメールを送ったところ、一瞬で枠が満杯になり、慌てて募集を締め切ったのだとか。

 この後は土のすき返しを何度か繰り返し、か細い稲の苗を植えこんで根を張らせるのに最適な泥の状態を作り上げた上で、いよいよ5月9日には田植えが始まる。