イチ推し多賀治純大吟朝日

ほのかな苦味に個性が光る

 

 

 3月10日にこのブログにアップした「岡山地酒53種の豪勢~その2(奇跡のお酒に青螺!?)」で、倉敷市児島にある十八盛酒造の「青螺姫」というお酒を紹介した。

すると倉敷に住む日本酒好きの友人から「十八盛は『多賀治純米大吟醸朝日』もお薦めです」というコメントが届いた。

さらに数日後には宅配便が届き、開けてみると多賀治の4合瓶が2本。「純米雄町」と 「純米大吟醸朝日」(いずれも無濾過生原酒直汲み)がセットになって収まっていた。

 推薦した以上は実際に味わってもらおうという気持ちがなんともありがたい。早速冷蔵庫にしまい、封を切る機会をうかがっていた。

生まれついての性分で、食事の時は好物は必ず最後まで取っておくタイプ。イチ推しの「純米大吟醸朝日」を一日も早く口にしたいのはやまやまだが、どうしても順番は「純米雄町」の方からということになってしまう。

 人によっては、まず箸をつけるのは好物から、つまり今回の場合は「純米大吟醸朝日」からというまったく逆の性分の人も少なくないのだという。

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 隣り合わせの県でありながら、神戸で暮らしていると岡山県の地酒に巡り合う機会というのは滅多にない。日本酒の銘柄を取り揃えている居酒屋に入っても、全国津々浦々の銘酒が並んでいるのに、その中に岡山の酒がないという経験は残念ながら当たり前だ。

 一度、三宮にあるおでん屋で、生まれ故郷である北房町(現真庭市)の銘酒「大正の鶴」を見つけてうれしくなり、イの一番に注文したことがあったが、次にその店に行った時には姿を消していた。以後もお目にかかったことはない。

 日本酒の生産量日本一の兵庫県のこと、他県の酒が付け入るすき間などないということなのか。いや、そんなことはない。全国的に名の知れたブランド酒など、ちょっとした店に入れば大抵顔を揃えている。それなのに岡山県産は…とひとりボヤく。

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 「多賀治」という名前の由来は、十八盛酒造の5代目当主、石合多賀治にちなんだもので、8代目に当たる現在の当主が6年ほど前に新しく世に出したのだという。

 「純米雄町」を空け、いよいよお薦めの「純米大吟醸朝日」の出番がやって来た。栓を抜くとき、軽くプシュッと空気の抜ける音がした。ひと口含むと、軽い発泡感が広がる。フルーティーな香りもあるが、さわやかな甘味の中にかすかな苦味を感じさせる。これは珍しい。色々な料理に合わせるにはうってつけかもしれない。

聞けば、数ある岡山の地酒の中でも「多賀治」の人気は上位ランクなのだとか。さすがは酒好きのチョイス。友人の厚意とセンスに敬意を表しながら、数日その味わいを楽しんだ。