12月、冬の入口の青森再訪

20年前のヒバ千人風呂は…

 

飛行機の窓から岩木山を見下ろす(2021年4月撮)

 

 いまのところ最北は知床温泉から、南は指宿温泉まで、仕事も含めて全国の温泉を巡る幸せに恵まれた。その中でもトップ3に入るお気に入りの秘湯が青森県にある酸ヶ湯温泉だ。八甲田山系の標高900㍍の山中にあり、一帯は全国でもトップクラスの豪雪地帯として知られる。ちなみにこのブログを書いている3月11日の積雪量は3m30cmを超えていた。

 その雪がまだ猛威を振るう前にと計画し、昨年(2023年 )12月初めに友人グループで酸ヶ湯を訪ねた。

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 私が初めて酸ヶ湯を訪れたのは2000年夏のこと。トヨタが発売したばかりの3代目セルシオのマスコミ向け試乗会を十和田湖近辺のワイディングロードを中心に開催された。その取材の途中に酸ヶ湯温泉の駐車場にまっさらのセルシオを停め、30分ほどの日帰り入浴を楽しんだのだ。

 混浴で有名なヒバ千人風呂のまるで体育館のようなスケールには圧倒された。当時は完全混浴だったため、タオル一枚体の前に当てただけの妙齢の女性もぎっしり。ただし、白濁した強酸性の湯に浸かってしまえば周囲の視線はほとんど気にならない。

本館の中を見学すると、長逗留する湯治客のための炊事場なども整えられていた。短い時間だったが、酸ヶ湯にしかない風情の端っこが感じられて、セルシオに戻った。             

2023年12月初めの八甲田山頂(2023年12月撮)

 

 二度目は友人旅行で出かけた2021年4月中旬。道路の雪は消えていたが、道の両脇には除雪された雪の壁が豪雪の名残りとしてそびえており、その高さはまだ5㍍を超えていた。

 20年ぶりの酸ヶ湯は大きく様変わりしていた。

 まずは女性の湯浴み着が販売されており、それを着用しての入浴が許されるようになったこと。

 女性専用の脱衣所から浴槽につながるスロープが設けられ、そこは板塀で囲ってあるため、女性が男性の目を気にせずに浴槽に入れるようになっていたこと。

 三点目は、大きな浴槽の真ん中あたり、湯舟の縁に矢印を描いた小さな看板が設けられ、男性エリアと女性エリアに暗黙の区分けが作られたこと。

 四点目は女性専用の時間帯が設けられていることだった。

 時代の流れか、その20年の間に男性側の入浴マナーに対する苦情が多くなり、一度浴槽を仕切る板塀が設けられたこともあったそうだ。ところが一方では酸ヶ湯の混浴文化を守ろうという男女双方からの声が上がり、その板塀は取り除かれることになった。ただし混浴に抵抗を示す一方の声にも配慮して、暗黙の区分けなどが工夫されるなどしたのだという。

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 今回のメンバーは私以外初めての酸ヶ湯。伊丹空港を飛び立ち、昼過ぎには青森空港に着いた。着陸前に上空から下をのぞくと、田畑や山は真っ白に雪が積もっていたが、道路は除雪されてアスファルトの色がのぞいていた。スマホの天気情報によると酸ヶ湯の積雪は30㌢程度。油断したわけではないが、大変な雪体験が待っていようとは…。

(この項続く)