3年目の酒米作りスタート

「ミチのムコウ」の酒造り

丹波篠山の里山舞台に

 

 日本酒を飲む一方の話ばかり重ねたが、その奥深い世界の一端を学ぶことができれば…と2年前から酒米作りに参加している。

 兵庫県丹波篠山市で展開されている里山プロジェクト「ミチのムコウ」(企画/運営:一般社団法人AZE)の取り組みのひとつ、「100人ではぐくむ名前はまだ無い日本酒」に加わって今年で3年目。丹波篠山市内の田んぼで酒米「五百万石」を育て、初年度の2022年は「ユメノツヅキ」、昨年は「カエルの寝床」という日本酒を造り出してきた。ちなみにこのネーミングも参加メンバーから募集して決めたものだ。

「ミチのムコウ」ではこの酒米作りの他に、田んぼの畔を利用した黒枝豆づくり、年間11回の農作業カリキュラムの実体験を通して、2030年を目標とする新しい里山づくりの人材育成プロジェクト「Be Satoyama 2030」などを展開している。

                   ◇

 自分自身、岡山県の里山の生まれ育ちなので水田は身近な存在だったが、実家が農家ではなかったため、稲作に関わる作業の経験はなかった。

 初めて参加した2022年、何より驚いたのは一粒の米から日本酒が生まれるまでのサイクルのスピード感だった。

爪楊枝のような苗を数本つまんで泥の中に植えこんだのがGW直前のこと。途中、生い茂る田んぼ周りの雑草を刈り取ったり、畔に黒枝豆の苗を植えたりしながら成長を見守った。稲刈りは8月末。あれほど頼りなげだった稲苗は、株を増やし、腰の高さまで伸びて見事な稲穂を実らせていた。

それを刈り取り、自分たちで切り出した竹で組んだ稲木に束を掛けて乾燥させる。それを脱穀、精米して地元の酒蔵「狩場一酒造」で酒造タンクに仕込んでもらった。それが12月の初めにはもう立派な日本酒としてビン詰めされ、目の前に姿を現すのだ。田植えから7カ月余り。台風の襲来、害虫の大量発生など、いくつもの紆余曲折はあったが、口にした発泡性の生酒のそれはそれはおいしかったこと。

                   ◇

 今年の酒米作りはすでにスタートしている。3月早々には「隅掘り」という作業が行われた。田んぼの全周をスコップを使って掘り、輪郭を整えるステップだ。この後、4月中旬には「畔塗り」といって、田んぼの水持ちをよくするため、鍬を使って周囲を泥で塗り固める作業が予定されている。その上で水路から水を引いて田んぼ一面に張り、GWが明けるとすぐに田植えにとりかかる。

 今年の酒の名前はまだ無い。

(ミチのムコウHP=https://michinomukou.org)