75歳を前に運転免許も車も

夫婦そろっての決断に驚く

 

 自分の年齢はもうすぐ68歳。友人、知人にも似た年頃の人が多いのが当然で、運転免許返上は仲間内ではまだ現実的な話ではない。それよりも、70歳を過ぎての更新には高齢者講習が組み込まれるそうだとか、75歳を過ぎると認知症のテストを受けなければならないらしいとか、精々そんな話を交わす程度のことだ。

 ただ、その親世代になると、年齢は90代がほとんど。しかも父親、母親、どちらにしても独り暮らしになっているケースの方が多い。そうなると、万が一のアクシデントを考えると、免許返上は喫緊の問題になってくる。

そんな友人のひとりは、九州の実家で独り暮らしをしている90歳過ぎの父親に編所を繰り返し説得していた。ところが、車なしでは買い物にも行けないとどうしてもいうことを聞かない。遠く離れて暮らしているため、気が気ではない毎日を過ごすのに疲れ果てていた。そして最後は一大決心、帰省した際に父親に断りもせず、車を売り払ってしまったのだそうだ。

 自分自身のカーライフをチェックしてみると、ここ数年の年間走行距離は約5千㌔がいいところだ。よく乗った時代でも1万㌔に届くかどうか。現在の用途は走行距離の8割がゴルフ場への行き帰りで、食料品も含めた日常の買い物に使うことはほとんどない。

 そういえばこんな知り合いがいた。60歳を前に単身赴任に出ている間に、奥さんが車を売り払ってしまったのだとか。必要なときはカーシェアを利用すればよいと言われた。税金、保険、駐車場代などが不要になるわけで、どちらがどれだけ得になるか、綿密な比較データを記入した紙を突きつけられて、納得するしかなかったという。

 もし、ゴルフをやめれば考えられなくもない選択かな、と思わされた。彼の場合はその後、ゴルフにはカーシェアで借りた車でやってくるか、その日のメンバーに近所の仲間が入っていれば便乗させてもらっている。

聞けば小さな車を半日借りて、5千円ほどの出費だそうだが、ほとんどゴルフ場の駐車場で時間を過ごす車のために…そんなことを思うと、精神衛生上よろしくはない。

 こうした話を聞くにつけ、免許返上はまだまだ他人事の世界…そう思っていた。

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 先日、近畿おかやま会という大規模な県人会の打ち合わせ会合が大阪であり、出席したときのことだった。

 円卓での会食で、かねてから顔見知りの先輩の隣りに座った。お年は75 歳手前。大のゴルフ好きでよく誘ってもらう。加えて週末には同年輩のメンバーのソフトボールチ-ムに入って試合を楽しんでいるのだそうだ。

 昨年秋に転倒して手首に亀裂骨折を負い、ゴルフもソフトボールも休んでいると聞いていた。

 「手首はどうですか?」

 「もう大丈夫。年が明けてからはゴルフも復活してるよ。沼田さんやってる?2月は何回?」

 「寒いのが嫌で、毎年1月、2月は月1~2回がいいところです」

 「え~、僕なんかこの2月、5回入れてるよ」

 という感じで、体の方の心配はもう必要なさそうだった。

 この話の流れの中で、思いもかけない告白が飛び出してきた。

「そろそろ免許を返上しようと思っててね」

 「えーっ!!」。

思わず声を上げた。