皇后杯祝勝イベントで選手が訴えたこと

リーグ戦での二冠で動員にテコ入れを

 3月2日のWEリーグ(女子プロサッカー)後半戦スタートを前に、1月27日の皇后杯決勝でPK戦の末に浦和を倒して日本一を達成したINAC神戸の優勝を祝う会が2月24日、神戸で行われた。ただし、お祝い一方ではなく、首位に立つリーグ戦の方でも優勝を、ということで、イベントのタイトルは「皇后杯優勝を祝う会&WEリーグ制覇に向けた決起会」と欲張った。

2年前からお世話になっている公益財団法人神戸市スポーツ協会の仕事の一環として、現地に赴いた。神戸市スポーツ協会が管理運営する神戸レディースフットボールセンターはINACの練習拠点。チームのクラブハウスもセンターの敷地内というご縁の深さがある。

拠点があるのは神戸市の二大人工島のひとつである六甲アイランドで、イベントの会場は島の動脈でもある新交通システムのメーン駅に隣接する商業施設のファミリー広場だった。

                  

女子サッカーの現状はどうか。正直甘くはない。地元(主にノエビアスタジアム)で開催されるINACの試合はスポーツ協会の仕事でよく観戦に出かけるが、スタジアムの規模もあってスタンドはガラガラの印象だ。

昨年11月、同じ神戸に本拠を置くヴィッセル神戸がVリーグ初優勝を決めた翌日、皮肉にも同じノエビアスタジアムでINACの試合が行われた。24時間前、約2万8千人の観客が詰めかけ、歴史的な熱狂に包まれたスタンドに足を運んだ観客は2千人に満たなかった。

どちらの試合もスタンドから観戦したが、その落差の大きさは残酷にさえ感じた。

ちなみにINACの昨シーズンのホームでの平均入場者は約2194人。それでもリーグでは浦和に次ぐ2位の動員で、リーグ平均となると1401人というレベルに落ち込んでしまう。

 澤穂希を中心とする日本代表が、決勝でアメリカを下してワールドカップを手にしたのは2011年のこと。当時のフィーバーの凄まじさは強く記憶に残っていて、女子サッカーもメジャースポーツの仲間入りをした実感があった。

 それから13年。W杯の年など、一時的に盛り上がることはあるが、肝心の国内リーグ戦の実態は極めて厳しいと言わざるを得ない。

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 優勝を祝うイベントは、熱心なINACサポーターに、商業施設に休日の午後を過ごしにやって来た家族連れなども加わって、にぎわっていた。神戸市長、神戸市議会議長らもマイクの前に立ち、間もなく後半戦が始まるWEリーグでの二冠達成に期待を込めてエールを送った。

 選手も数人がマイクを持ち、会場に向けて感謝の挨拶をする機会があったのだが、それぞれに表現の違いはあったものの、例外なく訴えていたのは「スタンドに足を運んでほしい」という切実な思いだった。

 後半戦、INACの地元初戦は3月9日(土)対サンフレッチェ広島戦。キックオフは16時だ。