※投稿時のミスにより、公開が遅れ、内容と日時がずれております。何卒、ご容赦ください。


山手 樹一郎 原作「夢介千両みやげ」

石田 昌也 脚本・演出

大江戸スクランブル

『夢介千両みやげ』



久しぶりの石田昌也。

そして、

ビックリするくらいの大失態作である。

失敗じゃない。失態だ。

とにかく、

初日近くから千穐楽まで、

何度観ても、

良いところが見つからない

これが、お芝居だけなら我慢もできる。


が、


不幸なことに、ショーまで

イマイチなのだ。

本当に、

雪組が不憫でならない。


ネタバレ、

不適切な発言があるかもしれません。

何卒、ご容赦ください。


開演5分前。

アナウンスがあって、

緞帳が飛ぶと、

見たことがある景色が広がる……



全面映像のタイトルバック…… 
これじゃ、
前公演の『シティーハンター』と、
ほとんど変わらない。

雪組は、
『この映像業者がスポンサーなのか? 』
と、ありもしないことまで考えてしまう。
それとも石田さんが、
『使ってみたかった』だけなのか?
(わざわざ舞台で赤字の『大入』はないだろう)

いざ開演。
彩風の夢介がセリ上がり、
両花道にズラリと旅人が並ぶ。
この花道に並ぶ旅人の
『股引』が全く揃っていない。
脚絆が弛んで、モンペになっていたり、
パジャマのズボンのような生徒もいる。
これで『時代劇の雪組』とは情けない。

振り落としで、舞台に早乙女が並ぶ。
入れ替わりで、
朝月のオランダお銀が登場。

さらに、汝鳥伶 演じる嘉平爺が出て、
見送りの芝居。

これだけ人を使って、
紹介したのは、たった3人。

一旦、道具幕が閉まって、
宿場に着いた様子。
合間にチョロチョロと出ていた
諏訪さき 演じる 斎藤新太郎 と 
一禾あお 演じる 斎藤新次郎の
斎藤兄弟と、
縣 千 演じる 金の字(遠山金四郎)の
3人が出て、次へのきっかけの芝居。

背の高い縣が、下駄を履いている……
下駄で道中とは…… 何かの修行か?

場所が変わって、
江戸の深川。

朝美絢 演じる伊勢屋の息子総太郎が、
首抜き浴衣で銀橋を渡り、
本舞台に戻って、
杏野このみ 演じる芸者 梅次、
妃華ゆきの 演じる芸者 浜次と
『深川マンボ』を踊る。

久しぶりに観る
『深川マンボ』だけれど、
道の真ん中で、
踊らせるのは無いだろう?
大道芸ではあるまいし、
後で出る『春駒一座』とも被る。
平舞台を使って、
大きく踊るのなら話は違うが、
『振り』も3人立ちに変えた訳ではなく、
見物から、声が掛かるのも判りにくい。
セリを上げて、
祭り屋台の雰囲気にでもすれば良いのに。

そのまま、
居所変わりで、伊勢屋の店先。
野々花ひまり 演じる下女のお松が、
黄八丈ぽい着物を着ているのも、
どうも、しっくり来ない。
黄八丈は、江戸時代から高級品。
かなりの大店のお嬢様が、
お洒落着で着るものだ。
後で出る、夢白あや 演じるお糸は、
少々年増向きの小紋。
顔が小さいのに、襟は詰め過ぎ。
あの小紋ではヒョロヒョロに見える。

どうも衣装選びが『なってない』
どこからでも良いから、
『中川菊枝さんを呼んで来い! 』
と言いたくなる。

お松の曰く有り気な様子で、暗転。

再び、元の宿場。軒先の茶店。
オランダお銀の正体がバレ、
ようやくここで、縣らが名乗る。

ここまでで、15分弱。

この後も、どんどん登場人物は
増えて行くけれど、話は一向に進まず、
必要な人物が全て揃うのは、
開演から1時間を過ぎたあたり…… 

これは酷い。
もう残り30分ちょっとで、幕が降りる。

間に合わないから、
急に客席に向かって、
和希そら 演じる 三太 が喋り始める。

それなら、
最初から三太を、
語り手にしておけば良いのに……

いや、別に三太じゃなくても、
せっかく専科から汝鳥伶が出演している。
嘉平爺が語り手なら、
出番に関係なく、場面にも関係なく、
いくらでも説明できるじゃないか?

とうとう三太だけじゃ足りなくなって、
脇筋メンバーがほぼ顔を揃えて、
話の回収を始める。

本来なら本筋であるはずの、
『夢介が、お銀のどこに惚れるのか』
には、全く手を着けず、
いつの間にか、
二人仲良く銀橋に出て
 ♪ こんな~オイラを~ 骨抜きにした~
などと呑気に歌い出す。

いやいや『骨抜き』じゃなくて、
完全な手抜きだ。
ここからでも
十分巻き返しができるのに、
(何てったって、脇筋を回収したんだから)
中途半端な『一つ目の御前』一派が、
また中途半端に仕返しにやってくる。

金の字、実は町奉行 遠山金四郎が、
『悪い奴らを片付けました! 』
の報告だけでも十分だろうに、
中途半端なドタバタの上に、
オランダお銀が『火玉』を炸裂させる。
間の悪いガス噴射の特殊効果があって、
時間稼ぎに、捕方がたった二人。
映像ではもう『大火』だけれど、
『アチ!アチ!』と間抜けな
一つ目一派らの声が流れる……

あれだけの火事騒ぎで、
お銀は『江戸所払い』の放免。
一つ目一派だけが、ドリフのコント状態。

どうした? 石田昌也!
一体、何がしたい?

もし、
全編コントのように仕上げたいのなら、
それなりの脚本を書かなくては
ダメだろう。

お銀の『殺してやるぅ~! 』も
ギャグにするなら、それも『有り』だ。
でも関係の無い三太に向かって
刃物を振り上げたら、
ノーマン・ベイツか、ただの殺人鬼だ。

初日近くは、
縣が長袴を捌き切れず、
今にも踏み破いてしまいそうだったし、
通人ぶる総太郎は色足袋を履いている。
総太郎は白足袋だろう。
色足袋じゃ野暮だ。田舎大尽じゃない。
夢介が色足袋なのはまだ良いが、
普通は裸足が基本。

とにかく、脚本も演出も、
どこもかしこも『穴』だらけだ。

トップ御披露目が終わった、
第2作目に、
何でこんなメッシュ作品なのか?
時代劇の雪組だから、
どうしても
在任中に日本物をというのなら、
柴田さんの追善で『千太郎纏しぐれ』でも
再演した方が良かっただろう?

切りがないので、愚痴はここまで。

この『どう仕様もない』作品を、
何とか幕を降ろせるようにしているのが、
彩風、朝月、朝美の3人だ。


特に、
彩風・朝月のトップコンビは、
舞台では演じない部分=脚本に無い
夢介とお銀の関係の変化を、
とても丁寧に表現している。

例えば、

夢介とお銀は、
一緒に住み始めた頃は、
お銀ばかりが一方的だったり、
火鉢を間に挟んで、さらに離れて
2人は座ったり、
あるいは夢介だけ立っていたりと、
一定の距離をおいている。
それが、場面を経る毎に近くなり、
視線だけで会話し、
最後には、
夢介に抱きしめられて、
お銀が顔を寄せるところまでになる。

お銀の座る位置の微妙な変化、
夢介に送る視線の違い、
それに反応する夢介の変化、
実にお見事だ。
良いトップコンビである。

まあおそらく、
石田昌也としては
『これで2人の関係をお察し下さい』
という考えなのだろう。
しかし、
100分弱のお芝居で、
2人だけで
愛の語らいをしている時間は、
3分もない。
夢介は、総太郎か、
春駒太夫や浜次などなど、
他の女性といる時間の方が、
はるかに長い。
言い換えれば
脚本に『無駄な部分』が多いのだ。

再び、愚痴はここまでにして。

朝月希和は、ほぼ一人芝居で、
本当に『お疲れ様』の一言に尽きる。
モノローグというよりは、
歌舞伎の女形芸の『しゃべり』のように、
朝月の台詞術は完成している。
感服致しました。

朝美絢の『つっころばし』具合も、
憎みきれない役柄も、
この人しか出来ないものだろう。
しかし、
やっぱりこの人の本領は、
改心してからの総太郎にある。

これからも、もっと違う役柄を、
どんどんモノにして欲しい。

さて、

この公演で、
綾 凰華 が宝塚から巣立っていく。

柄にもない『悪七』という役を、
毎回楽しそうに、
目一杯演じているのを観る度に、
『綾 凰華』の人柄の良さを感じる。
是非これからも、
その明るい人柄で、
目一杯活躍して欲しい。

今回はここまで。

最後まで読んで頂き、
真にありがとうございます。

次回は引き続き、
雪組公演
   中村 一徳  作・演出
ショー・スプレンディッド
『Sensational!』
について