
その中にある『○○』なるスナックは気さくなママと低価格が魅力で、僕も常連客のひとりとして、飲んだり歌ったりしていた。
ある日、某会社の上司と部下が二人入って来た。
55歳を過ぎた上司は常連客だか、45歳の部下は初めてのようだった。
しばらく飲んだり歌ったりしているうちに、22時を回っていた。
その頃、上司は店の外のベンチで、他の常連客と話がはずんでいたが、部下は酔ってしまったのか、カウンターにもたれて眠ってしまった。
突然、常連客のY子ちゃんが来店し、僕の右側で、潰れている部下の間に座った。
正直言って、Y子ちゃんはお世辞にも可愛いとは言えないが、気立ては良いらしい(ママの話によれば)。
僕が桑田佳祐のレッツトライアゲインを歌っている時に目覚めた部下がY子ちゃんを口説き、腰に手を回したり、身体に触ったりし始め、上司に怒られていた。
相変わらずカラオケを歌い、ママや他の常連客と会話を続け、桑田佳祐の『明日へのマーチ』を歌っている時、ちゅぱちゅぱ…なる音が聞こえて、常連客が音のする方向を見ると、二人がベロちゅ~しているではないか。
年配の女性常連客が怒り出して『他のお客さんに迷惑かけるから、出てって、他でやれ』と怒鳴った。
二人はそのまま店を出て、闇の中へ消えて行ったが、おそらくラブホではないかと想像できる。
トイレから戻ったママが知って、女性常連客に向かい『帰すなら、アタシが言うのに、アンタが言うのは筋違いでしょう』と大喧嘩。
後日談だか、翌日、上司が店に来て、部下とY子ちゃんの料金を支払うと言った。
部下もY子ちゃんも良い大人なんだから、アンタが払っちゃダメてしょうと金を受け取らなかったらしい。
その後、しばらくY子ちゃんは店へ来なかったが、ある時、謝罪に店を訪れたらしいが、一方部下は二度と暖簾をくぐる事はなかった。
嗚呼、これも人間模様だ。
その後、知り合いの間ではY子ちゃんを『ベロちゅ~』と呼ぶ人が増えたのは紛れも無い事実だ。