たった今家に戻った。


案の定、検査からの一週間は更に眠れなくなり寝不足気味だった。自粛中ということも今回だけは功を奏した。昨日は実家に行き不安を紛らわすことができた。やはりいつまでも両親の存在は心強い。


大きな不安に苛まれながら診察室への道を歩く。途中車椅子で意識を失ってしまったであろう男性とその家族、取り巻く看護師さんの呼びかけを聞きながら。何故か今回だけはどうしても大丈夫という自信はなかった。無治療になってから7年、時は記憶を薄れさせ、肝心なところで不安が最大限になる。


ここからは私の見解と価値観であると前置きしておこう。

前回のエコー検査でひっかかったのを引き金に、【再発】【転移】という言葉がいかに恐ろしく精神をおかしくするかを知った。治療はしないと決めているものの、やはり告げられた時のショックは相当なものだろうと思う。その時に人間は如何に欲深いかを知る。健康であれば幸せ、家族がいれば幸せ、そんな基本的思考を持ちながらも、日常に戻ればたちまち一変、些細なことでさえも不満へと次々変化を遂げる。健康で過ごしているからこそ経験できる感情なのに。見方を変えると、生きることに執着して多忙の日々を過ごすがために、余裕がなくなってしまうとも捉える。そして毎年この時期が近づくと自分の弱さを身をもって知るのである。そんなことを思いながら待ち合いで座っていた。


順番が呼ばれた。結果は異常なし。


涙が溢れそうだった。主治医は終始穏やかで、世間話などを交えながら診察を終えた。トリプルネガティブ乳がんの節目は5年、しかしまだまだ安心はできない。はっきり言ってくれる主治医とは本当に相性がいいと思う。そして何よりもその言葉が安定剤のような役割を果たしてくれる。


私はまた一年生きれる。嬉しい。嬉しい。嬉しい。本当にこの言葉だけ。