全身検査を終えた直後、経過観察のため形成外科にもかかっていた。
通院している病院はとてもお年寄りが多く、特に形成外科ともなると毎回座れないほどに混み、患者さんはイライラしているのがいつものパターンだ。
その日はいつも以上に混んでおり、お昼過ぎまで診察がずれ込んでいた。予約から1時間程待っただろうか。やっと診察室に呼ばれ、傷口を見せて何もないことを伝え、主治医から形成外科はもう来なくて大丈夫と伝えられた。10分程の診察時間。それでも一つ減るのは嬉しかった。術後1年頑張って良かったと思えた至福の瞬間だった。
会計ファイルをもらうために再び待ち合いのベンチに座る。ベテラン風の看護師さんが出てきた。きっと片手に持っているのは私のファイルだろう。案の定そうだった。
「〇〇さん一回忌おめでとう!」
まさに耳を疑った。
え?今言ったよね?間違えにしては…間違える?
いや、そんなはずはない…でも言ったよなぁ…
1人悶々と自問自答する。当の本人は全く気付いた様子もない。笑いながら、時には労いの言葉をかけながら話しかけてくる。
その日は心が落ち着かなかった。言葉の重みを知った日でもあった。言い間違いとはいえ、言葉で人は簡単に人は傷付く。また反対に言葉で喜ばせることも出来る。言葉とはとても重い。信用を得るのは時間がかかるが崩れるのは一瞬なのだから。