入院生活、それはある一定のルーティンがあり、ある意味時間に縛られた世界だった。

決まった時間に起床し朝食が運ばれてくる。午前中は形成外科の先生が来て、傷口の確認とガーゼの交換をしてくれる。まだ左胸は見ることは出来ず、誰にも悟られないように交換中はずっと目を瞑っていた。自信家の男前な先生だったので、私はどこか恥ずかしいと思いながら、また医者にはそんな感情なんてないだろう、そんなことを思いながら来院した母に可愛いおしゃれなパジャマが欲しいと伝えた。傷口の回復はとても順調であり、自家組織の壊死など全くなく、先生は『すごくきれいになってきてるから大丈夫!!』と笑い飛ばしていた。僅かな期待を持て、またその傷口がどうなっているのか気になり、でも入浴できるまでは絶対に触らないと決めていた。

夕方には乳腺外科の先生が毎日来てくれた。当初頼りない印象だったが、不思議なことに安心感というかほっとした気持ちになれた。現在はその時以上に心打ち明けれる存在になり、経過観察への通院も先生に逢えるのが楽しみとなっている。ある日の夕方、病理検査の結果が出たので明日の午前中にご家族と来てくださいと言われた。私の病気のステージとこれからの治療が明らかになる瞬間がとうとうくる。先生から手術前に言われていたのは、この短い時期でリンパ転移はないだろうということだった。ここが一番気になっているところだ。左手の浮腫みについては何も説明されてなかったため、リンパ転移があったための切除の後遺症とは知らなかった。どうかありませんように…ただただ祈るばかりだった。