入院は10月初日。

前日を迎えたこの日は運動会と娘の誕生日だった。秋晴れで青空の広がるとても良い天気だったのを覚えている。あれから娘は一切涙を流すことなく何事もなかったかのように過ごしており、それが唯一の救いだった。起床時おめでとうといち早く声をかけ、いつも通り見送り、一見何もかもが日常的だった。明日からこの生活がなくなることなんて考えられなかった。

小学校にはすでに多くの保護者が来ていた。その中に紛れるように私たちも足早に向かった。毎年のことながら、どこか頭の片隅でこれで最後かもしれないという想いもあった。脳裏に一生懸命焼き付け、ビデオや写真をたくさん撮り、ありとあらゆることを思い出にしようとしていた。今思えば気丈に振る舞っていたが、大きな不安を知らず知らずのうちに抱えていたのだろう。娘の演技は明日から入院することに不安を感じさせないぐらい活き活きとしており楽しそうだった。その姿を見て改めて娘の強さを感じた。

帰宅後は誕生日パーティーをした。欲しかったキャラクターグッズをたくさん詰め合わせて、いつも以上に豪華なプレゼントとなった。誕生日のメガネと帽子を被り、嬉しそうにポーズをとる。ろうそくに火が付いたケーキを大きく吹く。一つ一つの行動が私には全て宝物だった。

明日からしばらく会えなくなるね。入院予定は2週間。
娘が就寝後は入院準備の最終チェックをしベッドに入ったが、その日はなかなか寝付けなかった。