検査結果の日。

心配した父と娘が一緒について来てくれた。父が娘の面倒を見てくれていたため1人で診察室に入った。これで私の健康が保証される!そんな気持ちだった。

診察室の先生は深妙な面持ちだった。第一声は『わかってましたか?』…何が?
結果は悪性、しかもホルモン剤もハーブセチンも効かない、悪性度グレード3の浸潤癌、出てくる言葉が全て悪い表現ばかりだった。若年性進行癌、名前はトリプルネガティブ。
何てネガティブな名前なんだと思ったのを今でも覚えている。ただ私は冷静だった。ショックを受けることもなく、パニックになることもなく、淡々とこれからのことを考えていた。手術はするのか、薬では治せないのか、質問攻めになっていたと思う。先生はそれに淡々と答えてくれた。私が1番気になったのは抗ガン剤だった。美容師を天職を思っていた私は髪が抜けるのだけは本当に嫌だった。どうしてもしなければならない、生きるために。髪はほぼ抜ける確率が高い。言葉を選んで話す先生を前にある程度の覚悟が出来た。
結果手術してみなければ転移やステージはわからない。とりあえず後日家族を連れてきて下さいとだけ伝えられた。

診察室を後にした目の前には父と娘の姿があった。
父に若年性進行性乳癌だと告げた。父は軽く頷き、
現実を受け止めるしかない、治療しようと言ってくれた。

その後娘には何も言わずそのまま実家に預け、昼から出勤の主人が待つ家に帰った。結果を伝えた瞬間、彼は泣き崩れた。彼の会社には私も良くしてもらっていたため、彼はそのまま会社に連絡しこれから迷惑かけると思いますがよろしくお願いしますと泣きながら話していた。私はそんな姿を見守ることしか出来なかった。少しでも心配をかけたくない、死なへんために治療するねんで!と言いながら、その時初めて涙が溢れてきた。